再生可能エネルギー

核融合発電の関連企業と施設をやさしい解説付きで紹介【国内版】

核融合発電の関連企業と施設をやさしい解説付きで紹介【国内版】 再生可能エネルギー
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核融合発電は次世代のエネルギーとして注目されています。現在、国内で核融合発電に関するどのような取り組みが行われているのか気になる方もいるでしょう。この記事では、国内の核融合発電に関連する企業と施設を、初心者の方にも分かりやすいようにやさしい解説付きで紹介します。

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核融合発電とは?

まずは、核融合発電の基礎知識を簡単におさらいしておきましょう。

核融合発電の仕組みは、基本的に太陽が光と熱を発生させる仕組みと同じです。

2つの軽い原子核を高速で衝突・融合させると重い原子核が生成され、同時に膨大なエネルギーが放出されます。この反応を「核融合(フュージョン)」といいます。

そのエネルギーはとても大きく、例えば水素の同位体である重水素と三重水素による核融合反応の場合、わずか1gから得られるエネルギーが石油8tを燃焼させて得られるエネルギーに等しいのです。

また、核融合発電は大きなエネルギーが得られるだけではなく、CO2を発生しないため環境にもやさしいというメリットがあります。

核融合発電に関する基礎知識を知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。

それでは早速、核融合発電に関連する国内企業と施設を見てみましょう。

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核融合発電に関連する国内企業

現在、ITER機構(日本を含む世界7つの地域が協力して進めるプロジェクト)を中心に実用化が進められている核融合発電ですが、国内ではいくつかの企業が核融合発電の開発に取り組んでいます。本項では核融合発電に関連する国内の企業の事例をご紹介します。

株式会社LINEAイノベーション

株式会社LINEAイノベーション

引用:株式会社LINEAイノベーション

株式会社LINEAイノベーション(リニアイノベーション)は、将来の世代に核融合エネルギーを届けることを目指している会社です。

LINEAイノベーションは、日本大学と筑波大学の研究成果をもとに、FRC(磁場反転配置)方式ミラー方式という2つの技術を組み合わせた新しい方法で、核融合炉の実現を目指してい ます。

具体的な取り組みとして、2027年には「原型炉」の建設を開始し、2030年から試験運転を行い、最初の発電実証を目指しています。

未来のエネルギー問題を解決するために、核融合発電の研究と開発を進め、安全でクリーンなエネルギーの実現に取り組んでいる会社です。

参考:株式会社LINEAイノベーション

株式会社Helical Fusion

Helical Fusion

引用:Helical Fusion

株式会社Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)は、核融合エネルギーを利用した新しい発電方法の実現を目指す日本のスタートアップ企業で、2021年10月22日に設立されました。

Helical Fusionは、​ヘリカル核融合炉という特別な装置を開発しています。​この装置は、DNAの二重らせん構造に似た形をした超電導コイルを使って、高温のプラズマを安定的に閉じ込めることができます。​これにより、持続的な運転が可能となり、安全で効率的なエネルギー供給が期待されています。 ​

同社は、2034年までに世界初の定常核融合炉の実現を目指しており、持続可能なエネルギー源を社会に提供することを目標としています。 ​また、KDDIなどの大手企業からの出資を受け、技術開発や事業展開を加速しています。

参考:Helical Fusion

京都フュージョニアリング株式会社

京都フュージョニアリング

引用:京都フュージョニアリング

京都フュージョニアリング株式会社は、2019年に設立された京都大学発のスタートアップ企業で、核融合エネルギーの実現に向けた技術開発を行っています。 

核融合炉の加熱装置や熱を取り出す装置など、核融合発電に必要なさまざまな機器やシステムの研究開発を行っています。​さらに、これらの技術を組み合わせたプラント全体の設計も手掛けています。

具体的な取り組みとして、世界初の核融合発電試験プラントUNITY」の建設を進めています。​この施設では、核融合炉からの熱を取り出し、実際に発電するシステムの試験を行う予定です。​UNITYは、核融合炉と同等の環境を構築する「炉内環境試験装置」に加え、熱を取り出す「ブランケット」、取り出した熱を輸送する「液体金属ループ」、「先進熱交換器」および「発電システム」、プラズマを加熱する「プラズマ加熱装置」、プラズマを排気する「ダイバータ」、「水素同位体回収循環装置」、そして核融合燃料の循環を試験する「燃料サイクル実証系」を備えます。

また、2023年には京都府久御山町に自社の研究開発拠点「京都リサーチセンター」を開設し、核融合プラントに必要な熱サイクルシステムなどの研究開発を進めています。 ​

さらに、関西電力グループや丸紅株式会社など、国内の大手企業からの出資を受け、核融合技術の実用化に向けた連携を強化しています。
参考:京都フュージョニアリング

東芝エネルギーシステムズ株式会社

東芝エネルギーシステムズ

引用:東芝エネルギーシステムズ

東芝エネルギーシステムズ株式会社は、国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画に参加し、重要な機器の設計と製作を担当するなど、核融合発電の実現に向けて様々な取り組みを行っています。

具体的には、プラズマを閉じ込める超伝導コイルである「トロイダル磁場コイル(TFコイル)」の設計と製作を行っています。TFコイルは高さ16.5メートル、幅9メートル、重量約300トンという巨大な構造物であり、その製作には非常に高度な技術が求められます。

なお、ITER計画において、TFコイルの製作を担当し、2023年2月には日本が分担する全8基のTFコイルの製作を完了しました。

また同社は、国立研究開発法人量子科学技術連携研究開発機構(QST)と共同で、原型炉向けの技術開発も進めています。

参考:東芝エネルギーシステムズ

三菱重工業株式会社

三菱重工

引用:三菱重工

三菱重工業株式会社も「ITER(イーター)」計画に参加するなど、国際的なプロジェクトに積極的に参加して重要な役割を担っています。

同社はITERプロジェクトでの中核を成す機器の製作を担当しています。特に、東芝エネルギーシステムズと同様に核融合炉内で高温のプラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させる「トロイダル磁場コイル(TFコイル)」の製作が重要な役割です。

技術者の皆さんは、これまでにない高精度の製品製作に挑戦し、試行錯誤を重ねながらも成功を収めています。例えば、溶接はわずかな変形も許されず、精密な作業を実現しています。 この取り組みは、三菱重工の技術力の高さを示すとともに、核融合エネルギーの実現に向けた大きな一歩となっています 。

さらに、三菱重工はITERプロジェクト以外にも、核融合炉を構成する主要機器の開発設計や研究開発を推進しています。

参考:三菱重工

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核融合発電に関する国内の施設

続いては、国内に存在する核融合発電関連施設をご紹介します。近い将来の実用化に向けて、最先端の研究が進められています。

那珂フュージョン科学技術研究所

那珂フュージョン科学技術研究所

引用:文部科学省

那珂フュージョン科学技術研究所は、国内に2か所ある「量子科学技術研究開発機構 量子エネルギー部門」のうちの1つです。茨城県那珂市に位置し、以下のような取り組みを行っています。

  • JT-60SAの運用:日欧が共同で建設した世界最大級のトカマク型超伝導プラズマ実験装置で、核融合炉の実現に向けたプラズマの長時間維持や高性能化の研究を行っています。
  • ITER計画への貢献:フランスで建設が進む国際熱核融合実験炉(ITER)プロジェクトにおいて、那珂研究所は重要な部品の製作や技術の提供を行っており、国際的な核融合研究に貢献しています。

また、那珂フュージョン科学技術研究所では一般向けの施設見学会を開催し、核融合エネルギーの理解促進や地域との交流を図っています。

参考:那珂フュージョン科学技術研究所

六ヶ所フュージョンエネルギー研究所

六ヶ所フュージョンエネルギー研究所

引用:文部科学省

六ヶ所フュージョンエネルギー研究所(旧称:六ヶ所核融合研究所)は、国内に2か所ある「量子科学技術研究開発機構 量子エネルギー部門」のうちの1つです。青森県六ヶ所村に位置し、核融合エネルギーの研究開発を行っています。 

六ヶ所フュージョンエネルギー研究所は、核融合発電の実現に向けて、以下のような取り組みを行っています。

  • 国際核融合材料照射施設(IFMIF)の設計・実証活動:核融合炉で使用される材料が高エネルギー中性子の照射に耐えられることを検証するため、IFMIFの設計と工学の実証を進めています。
  • 国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)の運営:核融合エネルギーの研究開発を推進するため、国際的な研究拠点としてIFERCを運営し、理論・シミュレーション研究や原型炉設計の活動を行っています。
  • 加速器LIPAcの開発:核融合炉に必要な高エネルギーの粒子ビームを生成するための加速器LIPAcの開発を行っています。

また、地域住民に研究内容を知ってもらうために、毎年「公開イベント」を開催しています。 この施設では、核融合炉の仮想視覚(VR)体験や科学実験体験コーナーなど、子どもから大人まで楽しめるプログラムが用意されています。

参考:六ヶ所フュージョンエネルギー研究所

自然科学研究機構 核融合科学研究所

核融合科学研究所

引用:文部科学省

核融合科学研究所(NIFS)は、岐阜県土岐市にある研究機関で、将来のクリーンなエネルギー源として期待される核融合エネルギーの実現を目指しています 。具体的には以下のような取り組みを行っています。

  • 大型ヘリカル装置(LHD)の運用:世界最大級の核融合実験装置である大型ヘリカル装置を用いて、超高温のプラズマを生成し、その性質や制御方法を研究しています。
  • スーパーコンピュータ「雷神」によるシミュレーション:プラズマの複雑な動きを再現するために、高性能なスーパーコンピュータを使ってシミュレーションを行い、核融合炉の設計や運用に取り組んでいます。
  • 共同研究と教育活動:名古屋大学など複数の大学や研究機関と協力し、共同研究を推進しています。また、次世代の研究者を育成するための教育プログラムも充実しています。

また、同研究所では研究を通じてさまざまな社会貢献も行っています。例えば一般の人々に研究内容を知ってもらうために、毎年オープンキャンパスを開催しています。 2024年は「体感!体験!プラズマエネルギー」をテーマに一般公開を行いました 。

参考:核融合科学研究所

大阪大学レーザー科学研究所

大阪大学レーザー科学研究所

引用:文部科学省

大阪府吹田市にある大阪大学レーザー科学研究所(ILE)は、1972年に設立され、レーザー技術の開発と応用で世界をリードしてきました。 特に、レーザーを使った核融合研究に特化している施設です。

大阪大学レーザー科学研究所では、核融合発電の実現に向けて以下のような取り組みを行っています。

  • レーザー核融合システムの研究開発:高出力レーザーを用いて核融合反応を起こす「レーザー核融合」の方式で、将来的な発電炉の実現を目指しています。
  • 燃料目標の開発:核融合の燃料となる目標の製造方法を研究し、均一なレーザー照射を可能にする高品質な目標の開発を行っています。
  • 発電炉システムの構築:核融合発電炉内での特殊な環境に耐える装置や材料の開発を進め、燃料供給装置や高強度レーザーに対応する光学機器の研究を行っています。
  • 光学材料の放射線損傷研究:レーザー核融合で使用される光学材料が放射線による損傷を受けることを防ぐため、様々な材料の耐久性を評価し、改良を進めています。
  • 大型レーザー装置「激光XII」の運用:高エネルギー密度物理や慣性閉じ込め核融合の研究に使用される12ビームの高出力レーザー装置「激光XII」を運用し、核融合研究を推進しています。
  • 産学連携による研究拠点の設立:レーザー核融合商業炉の実現に向けて、株式会社EX-Fusionと共同で「EX-Fusion レーザー核融合共同研究部門」を設立し、レーザー照射システムの実証研究を行っています。

参考:大阪大学レーザー科学研究所

まとめ

核融合発電は原子力発電と似ているものと勘違いされることがありますが、とても安全なシステムです。地球環境に優しく、燃料供給の安定した未来のエネルギー源として、世界中で研究が進められています。本記事でご紹介してきたように、日本国内でも世界最先端の研究が続けられています。

しかし、核融合発電の実用化にはまだ多くの技術的な課題が残されています。プラズマの安定制御や発電効率の向上、コスト削減など、乗り越えるべき壁は多いです。また、商業化には国際的な協力と長期的な投資が必要です。

これらの課題を乗り越えることができれば、核融合発電は人類のエネルギー問題を根本的に解決する鍵となるでしょう。今後の研究と技術革新が、私たちの未来をどのように変えていくのか注目して下さい。

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