再生可能エネルギー地球温暖化

メタネーションとは?仕組みや将来性などをやさしく解説

メタネーションとは?仕組みや将来性などをやさしく解説 再生可能エネルギー
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二酸化炭素(CO₂)を減らし、地球温暖化を防ぐための新しい技術として注目されているメタネーション。聞きなれない言葉かもしれませんが、未来のエネルギー社会を支える重要なカギとなります。本記事では、メタネーションの意味や仕組み、メリット、実際の導入例、将来性までをやさしく解説します。

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メタネーションとは?

メタネーションとは?

画像出典:日本ガス協会

メタネーションとは、二酸化炭素(CO₂)水素(H₂)を使って、天然ガスの主成分であるメタン(CH₄)を人工的に作る技術のことです。この技術によって、再生可能エネルギーで作った水素と、工場などから出るCO₂を組み合わせて、環境にやさしい合成燃料を作ることができます。もともとは1970年代から研究が進められてきましたが、近年の脱炭素社会の流れにより、再び注目されています。

たとえば、太陽光発電などで余った電力を使って水を電気分解し水素を作り、その水素とCO₂からメタンを合成することで、再利用可能なエネルギー源として活用できます。このように製造されたメタンのことをe-メタンと呼びます。e-メタンは都市ガスとして利用できるため、既存のインフラをそのまま使えるのも特徴です。

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メタネーションの仕組み

メタネーションの仕組み

画像出典:日立造船

メタネーションの仕組みは、次のようになります。

  1. 水を電気分解して水素を作る:このとき使う電力は、太陽光や風力などの再生可能エネルギー。
  2. 二酸化炭素を回収する:工場や発電所などから出るCO₂を回収します。
  3. 水素とCO₂を反応させてメタンを合成する:化学反応式で表すと次の通りです。

​CO₂+4H₂→CH₄​+2H₂O

この反応は高温(約300度)で行われ、触媒(金属など)を使って効率よく進められます。

できあがったメタンは、ガスとして貯蔵・輸送が可能で、発電や暖房、調理などに使えます。再生可能エネルギーの変動をうまく調整し、安定したエネルギー供給を実現する点で非常に有効です。

なお、現在のところ、水を電気分解して得られる水素(グリーン水素)だけでは、メタネーションに必要な量をすべてまかなうのは難しいとされています。グリーン水素の製造には大量の再生可能エネルギーとコストがかかるため、まだ供給量が限られているのが現状です。

そのため、実用段階では、他の水素供給源(たとえば、天然ガス由来の水素や工場副産物として得られる副生水素)と組み合わせて使用されるケースもあります。ただし、こうした水素はCO₂を排出することもあるため、本来の脱炭素の目的を果たすには、将来的にグリーン水素の供給量を増やしていくことが不可欠です

政府や企業は現在、大規模な水素製造拠点や電解装置の導入に投資を進めており、今後はよりクリーンで安定した水素供給が可能になると期待されています。

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メタネーションのメリット

メタネーションのメリット

画像出典:日本ガス協会

メタネーションには、以下のようなメリットがあります。

  • CO₂を再利用できる:大気中に放出されるCO₂を再利用するため、温室効果ガスの排出を減らせます。
  • 再生可能エネルギーを有効活用:太陽光や風力など、天候によって変動しやすい再エネをガスに変換して貯めることで、安定した利用が可能になります。
  • 既存のインフラが使える:合成されたメタンは都市ガスとほぼ同じ成分なので、現在のガス配管やガス機器をそのまま使えます。
  • エネルギーの地産地消が可能:地域で発電し、地域で燃料を作って使える仕組みにもつながります。

このように、メタネーションは環境にも経済にもやさしい循環型エネルギー社会の実現に向けた大きな一歩につながります。

大阪万博におけるメタネーション

大阪万博におけるメタネーション

画像出典:大阪・関西万博公式サイト

2025年の大阪・関西万博では、メタネーション技術が実証的に導入されています。大阪ガスなどが中心となり、会場内の一部エリアでCO₂と水素から合成したメタンを使ったエネルギー供給を行っています。

この取り組みでは、太陽光発電で作った電力を使って水素を製造し、万博会場内で発生するCO₂と反応させてメタンを作ります。そのメタンを燃料として、会場内の発電や空調、調理などに使うことで、脱炭素のエネルギー利用モデルを世界に発信します。

実証実験を通じて、メタネーションが実際に社会にどう組み込まれていくのかが注目されています。

また、こちらのページでは、大阪・関西万博で体験できる未来の発電を紹介していますので、よろしければ参考にして下さい。

メタネーションをリードする企業

メタネーションをリードする企業

画像出典:大阪ガス公式サイト

現在、メタネーション技術をリードしているのは、以下のような日本やドイツの企業です。

  • 大阪ガス:関西万博で実証実験を主導。独自の触媒技術で高効率な合成を目指す。
  • カナデビア(旧・日立造船):小型で分散型のメタネーション装置を開発中。
  • 東京ガス:都内での水素・メタンの製造・活用モデルを構築中。
  • Audi(ドイツ):自動車メーカー初のe-gas(合成メタン)製造プラントを建設。

それぞれの企業の取り組みを詳しく解説します。

大阪ガスのメタネーション

大阪ガスのメタネーション

画像出典:大阪ガス公式サイト

大阪ガス(Daigasグループ)は、再生可能エネルギー由来の水と二酸化炭素(CO₂)から合成メタン(e-メタン)を製造する「SOECメタネーション」技術の開発に注力しています。この技術は、都市ガスの脱炭素化を目指す取り組みの一環として、2030年代の実用化を目指しています。

SOECメタネーションとは?

SOECとは「Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物形電解セル」の略です。SOECメタネーションは、高温(約700~800℃)で水蒸気とCO₂を電気分解し、水素(H₂)と一酸化炭素(CO)を生成します。これらを触媒反応によりメタン(CH₄)に合成するプロセスです。この一連の反応により、外部から水素を調達することなく、再生可能エネルギーを活用してe-メタンを製造できます。

従来のメタネーション技術では、エネルギー変換効率が55~60%程度でしたが、SOECメタネーションでは、メタン合成時の排熱を有効利用することで、85~90%の高効率を実現できると期待されています。

開発の進捗と実証試験

2024年度からラボスケール(一般家庭2戸相当)の試験を開始し、2025年度にはベンチスケール(約200戸相当)の試験施設を完成させました。この施設では、SOEC水蒸気電解装置と独自開発の触媒を用いたメタン合成装置を組み合わせ、装置の性能確認やプロセス全体の運転データの取得を行っています。

今後は、2028年度から2030年度にかけてパイロットスケール(約1万戸相当)の試験を進め、2030年度に世界最高レベルのエネルギー変換効率を実現するe-メタン製造技術の確立を目指しています。

大阪万博での実証実験「化けるLABO」

2025年の大阪・関西万博では、会場内に設置された実証設備「化けるLABO」において、e-メタンの製造実証を行っています。化けるLABOでは、会場内で発生する生ごみを発酵させて得られるバイオガスや、直接空気回収(DAC)装置で回収したCO₂と、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を用いて、一般家庭約170件分に相当する量のe-メタンを製造します。製造されたe-メタンは、迎賓館の厨房やガスコージェネレーション設備(廃熱も同時に回収する発電設備)で利用されています。

将来展望と社会実装

SOECメタネーション技術の社会実装に向けて、2030年代後半から2040年頃の実用化を目指しています。この技術により、都市ガスのカーボンニュートラル化を実現し、既存のガスインフラを活用しながら、脱炭素社会の実現に貢献することが期待されています。

また同社は、バイオメタネーション技術の開発にも取り組んでおり、下水汚泥や廃プラスチック由来のバイオガスを利用したメタン製造の研究も進めています。

参考:大阪ガス公式サイト

カナデビア(旧・日立造船)のメタネーション

カナデビア(旧・日立造船)のメタネーション

画像出典:カナデビア公式サイト「プラント概念図」

カナデビア(旧・日立造船)によるメタネーション技術の開発と実用化の活動は、国内外での実証試験や装置の提供、研究開発拠点の整備など多岐にわたります。以下でおもな取り組みを解説します。

造船の実績を活かした取り組み

2024年に日立造船から社名変更したカナデビアは、長年にわたる造船などで培ってきた技術を活かしてメタネーション装置を開発しています。この装置は、産業施設の排ガスから回収したCO₂をメタン燃料に変換・有効利用することで、CO₂排出削減およびカーボンリサイクル社会の早期実現に貢献します。造船業ではCO₂の排出量が多いため、従来から削減に向けてさまざまな工夫が行われてきました。同社の装置は、高転換率(99%以上)、高効率(75~80%)、高純度(96vol%-CH₄)、高耐久性(20,000時間以上)といった特長を持ち、既存の天然ガスインフラを活用できる利点があります。

主な実証プロジェクトと導入事例

カナデビアが行ってきた実証プロジェクトと導入事例は、おもに4つあります。まず1995年に東北大学と共同で世界で初めてメタネーションの実証試験を行い、高性能触媒の開発や実用化に向けた実証実験を行ってきました。

2022年には神奈川県小田原市の環境事業センター内に、ごみ処理場で排出されるCO₂を水素と反応させてメタンを製造するメタネーションの実証設備を設置しました。この取り組みは、ごみ処理場のCO₂によるメタネーションとして世界初の試みであり、メタンの製造能力は毎時125ノルマル立方メートルです。 

また、2021年にも東京ガス株式会社よりメタネーション装置を受注し、神奈川県横浜市の横浜テクノステーション内に設置しました。この装置は、メタン製造の安定性評価や製造ガスをガス消費機器に供給する検証を行うために使用されます。

2019年には国際石油開発帝石株式会社(INPEX)と共同で、新潟県長岡市の越路原プラント敷地内にメタネーション試験設備を完成させました。この設備では、天然ガス生産時に付随して出されるCO₂と、水の電気分解によって製造された水素を合成することによりメタンを製造します。

研究開発拠点「PtG Square」の設立

2021年には、Power to Gas(PtG)関連事業を積極的に推進するため、大阪府大阪市の築港工場内に「PtG Square」を新設しました。この施設では、水電解装置の効率的な組立・出荷を可能とするための大型電解セルスタック組立場やクリーンルーム、評価試験場などからなる水素エリアと、メタネーション反応の核となる触媒の評価や前処理を行うメタネーションエリアで構成されています。

海外展開:中国での事業実証

2020年には、中国の陝西省楡林経済技術開発区と、同社のメタネーション技術の中国国内での事業実証に関する協力覚書を締結しました。この取り組みは、日中両国の政策協力に貢献するものであり、中国における低炭素・循環型水素社会の実現を目指しています。

参考:カナデビア公式サイト

東京ガスのメタネーション

東京ガスのメタネーション

画像出典:東京ガス公式サイト「革新的メタネーション技術」

東京ガスは都市ガスの脱炭素化を目指し、メタネーション技術の開発と社会実装に積極的に取り組んでいます。同社は2030年までに都市ガス供給量の1%をe-メタンに置き換えることを目標とし、その後の商用化拡大を計画しています。

革新的なメタネーション技術

2021年度から神奈川県横浜市鶴見区において、小規模なメタネーション実証試験を開始しました。この実証では、再生可能エネルギー由来の電力を用いた水電解装置で水素を生成し、回収したCO₂と反応させてe-メタンを製造する一連のプロセスを検証しています。また、既存のサバティエ反応に加え、ハイブリッドサバティエ技術PEM(固体高分子電解膜)を用いたCO₂還元技術バイオリアクター技術など、さまざまな革新的なメタネーション技術の開発にも取り組んでいます。

国内外でのサプライチェーン構築

e-メタンの安定供給を実現するため、国内外での製造拠点の確保とサプライチェーンの構築を進めています。特に、米国では日米コンソーシアムによる「ReaCH₄プロジェクト」を推進し、e-メタンの大規模製造と日本への輸出を目指しています。また、東南アジア、オーストラリア、中東などでも現地企業と連携し、製造拠点の多様化と安定供給体制の強化を図っています。

政府支援と共同研究

2022年、大阪ガスとともに国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金」事業に採択され、革新的メタネーション技術の研究開発を進めています。このプロジェクトでは、製造プロセスの一体化や排熱利用による高効率化、水とCO₂から直接e-メタンを製造する技術の開発など、コスト削減と効率向上を目指した取り組みが行われています。

参考:東京ガス公式サイト

アウディ(Audi)のメタネーション

Audi e-gas Plant
Audi e-gas Plant

画像出典:アウディ公式サイト「Audi e-gas Plant」

アウディ(Audi)は自動車メーカーとして世界で初めてメタネーションを導入しました。特に「Power-to-Gas(PtG)」技術を用いた世界初の商業規模プラントの稼働が注目されています。

「Power-to-Gas」プラントとは

アウディは2013年、ドイツ・ニーダーザクセン州ヴェルルテにおいて、再生可能エネルギーを利用して水素と二酸化炭素から合成メタン(e-gas)を製造する「Power-to-Gas」プラントを稼働させました。このプラントでは、風力発電などのグリーン電力を用いて水を電気分解し、水素を生成します。その後、水素とバイオガスプラントから供給されるCO₂を化学反応させ、合成メタン(e-gas)を生成します。生成されたe-gasは、既存の天然ガス供給ネットワークを通じてCNG(圧縮天然ガス)ステーションに供給され、CNG車両(圧縮天然ガス自動車)の燃料として利用されます。

環境への貢献とCO₂削減効果

e-gasプロジェクトにより、年間約1,000トンのe-gasが生産され、約2,800トンのCO₂が固定されます。これは、約22万4,000本のブナの木が1年間に吸収するCO₂量に相当します。また、e-gasを燃料とするAudi A3 Sportback g-tronなどのg-tronモデルは、走行時に排出されるCO₂と同量のCO₂がe-gas製造時に使用されるため、実質的にCO₂ニュートラルな走行が可能となります。

電力網の安定化への寄与

ヴェルルテのe-gasプラントは、再生可能エネルギーの変動による電力供給の不安定性を補う役割も果たしています。このプラントは、電力需給バランス市場への参入が認定され、最大負荷時に柔軟に対応することで、電力網の安定化に貢献しています。

e-fuel戦略の一環としての取り組み

アウディは、e-gasの他にもe-diesele-gasolinee-benzin)などの合成燃料の研究・開発を進めています。例えば、スイスのラウフェンブルクでは、水力発電を利用したe-dieselのパイロットプラントを建設し、年間約40万リットルの生産を計画しています。これらの取り組みは、再生可能エネルギーを活用し、CO₂排出を削減する持続可能なモビリティの実現を目指すアウディのe-fuel戦略の一環です。

参考:アウディ公式サイト

これらの企業の他にも世界中でメタネーション技術の開発が行われています。各社が競って技術開発するとともに、協力して技術の標準化やコストダウンを進めることで、メタネーションの社会実装が一気に進む可能性があります。

メタネーションの将来性

メタネーションの将来性

画像出典:東邦ガス公式サイト「知多LNG共同基地でのe-メタン製造実証」

メタネーションは、2050年カーボンニュートラル温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けて重要な役割を果たします。

再生可能エネルギーの不安定さを補う手段として、またエネルギーを貯める手段として期待されています。さらに、国際的には再エネ由来の水素やメタンを「グリーン燃料」として輸出入する新しいエネルギー取引も生まれつつあります。

日本政府も「水素基本戦略」や「グリーン成長戦略」の中でメタネーションを重要技術と位置づけており、今後ますます研究・実用化が進むと考えられます。

まとめ

メタネーションは、二酸化炭素(CO₂)と水素(H₂)から合成メタンを作る技術で、脱炭素社会の実現に向けた注目の方法です。再エネの有効活用、温室効果ガスの削減、既存インフラの活用といった多くの利点があり、万博や先進企業による実証が進んでいます。将来的には、私たちの身近なエネルギーのかたちが大きく変わる可能性を秘めており、今後の発展にぜひ注目してください。

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