寿命となった太陽光発電の撤去・廃棄は、適切な方法で行わなければなりません。
思わぬ不具合や故障が発生することもあるので、撤去・廃棄について基礎的な方法を知っておくと安心です。
この記事では、太陽光発電の中でも特に太陽電池モジュールの撤去・廃棄の方法について、初心者の方にも分かりやすいようにできるだけ簡単な言葉で解説しています。
太陽電池モジュールは産業廃棄物
太陽光発電の太陽電池モジュール(ソーラーパネル)の廃棄方法は、国が定めた法規によって決められています。
太陽電池モジュールは人体や環境に悪影響のある物質が含まれているため、廃棄する際には産業廃棄物として処理しなければなりません。
また、近年の太陽光発電の大量導入により、リサイクルの必要性が高まっていることにも注目するべきです。
環境省は、寿命を迎える太陽電池モジュールの廃棄が2030年代後半あたりからピークとなり、産業廃棄物が処理仕切れなくなる可能性があることを警告しています。
下表は、使用済み太陽電池モジュールの排出見込み量を示すデータです。
引用:環境省「太陽光発電設備等のリユース・リサイクル・適正処分に関する報告書」
また、産業廃棄物には「排出者」という概念があり、廃棄にあたっては排出者が責任を問われる立場として明確に定義されています。
太陽光発電の撤去が必要なケース3例
太陽光発電設備を撤去しなければならなくなるケースは、おもに次の3つがあります。
それぞれの例ごとに、誰が排出者となるのか注意して下さい。
太陽電池モジュールの寿命
太陽電池モジュールの寿命は、一般的に20年~30年と言われています。
太陽電池モジュールが寿命で稼働しなくなった場合には、その太陽光発電を設置した業者が廃棄物の排出者となり、廃棄の責任を負う立場です。
太陽電池モジュールが寿命を迎えた場合は、太陽光発電の設置を依頼した業者に撤去を依頼しましょう。
不具合・故障の発生
不具合や故障で太陽電池モジュールの交換が必要になった場合も、その太陽光発電を設置した業者が廃棄物の排出者となるので、業者が廃棄の責任を負います。
寿命を迎えた場合と同じように、太陽光発電を設置した業者に撤去を依頼しましょう。
ただし、太陽電池モジュールを設置してそれほど年数が経過していない場合は、太陽電池モジュールを製造したメーカーの保証が受けられる可能性があります。
まだ新しい設備なのに不具合や故障が発生したら、施工業者よりも先にメーカーに問い合わせてみるとよいでしょう。
災害による設備の破損
地震や台風などの自然災害や、交通事故や火災などの事故が原因で太陽光発電設備が破損した場合は、設備の所有者が廃棄物の排出者となります。
なぜなら、所有者には事故や災害から設備が被害を受けないように保護したり、破損したら修理の手配をするなど、設備を管理する義務(善管注意義務)があるからです。
ただし、所有する太陽光発電が山間部にあるなど管理が難しい場合には、管理を請け負う業者などに委ねることもできます。
管理を請け負うことをアセットマネジメントといい、このようなケースで設備が破損した場合はアセットマネジメント業者が責任を負います。
ちなみに、事故や自然災害などが原因で架台から落下した太陽電池モジュールは、産業廃棄物ではなく一般廃棄物とみなされることに注意が必要です。
一般廃棄物の廃棄方法は各自治体ごとに決められているので、お住まいの役所に問い合わせて適切な廃棄を行いましょう。
一般的には、それぞれの自治体が指定する廃棄物専門業者を紹介されるので、廃棄を依頼することになります。
太陽電池モジュールの撤去・廃棄方法
太陽電池モジュールは産業廃棄物なので、決して自身で安易に処理せず、専門業者に依頼して適切に廃棄してもらわなければなりません。
また、自然災害などで破損した場合でも、所有者に排出者責任があるからといって慌てて太陽電池モジュールに触れたりすると、感電などの事故の元になるので要注意です。
撤去・廃棄のおもな手順は、以下の通りです。
- 専門業者に連絡
- 撤去・廃棄の見積り
- 太陽電池モジュールの撤去
- 指定された処分場で合法的に廃棄
寿命を迎えた太陽電池モジュールは、劣化した部分があるとカドミウムなどの有害物質が漏れる恐れがあるので、自身で安易に撤去してはいけません。
不具合や故障が発生している太陽電池モジュールは、原因が判明するまでは感電防止のために触れないようにしましょう。
事故や自然災害によって太陽電池モジュールが破損した場合は、周囲への二次被害を防ぐために対応を急がなければなりません。
しかし、その場合でも安易に太陽電池モジュールに触れたりせずに、専門業者が到着するのを待ちましょう。
太陽電池モジュールの廃棄は業者選びにも要注意
使用済みの太陽電池モジュールは産業廃棄物として処理しなければならないことは先述の通りですが、処理を依頼する業者選びにも注意しなければなりません。
なぜなら、太陽電池モジュールの撤去・廃棄を専門とする業者はまだ数が少なく、競争相手が少ないこともあって、技術や知識が十分ではない業者も存在しているからです。
さらに、産業廃棄物の処理について規定された「排出事業者責任」によると、業者が不法投棄すると所有者にも責任が及ぶので、所有者も共に罰せられる可能性があります。
参考:環境省「産業廃棄物を排出する事業者の方に」
想定外の罪を負わされないためにも、また環境保護のためにも、信頼できる専門業者を選びましょう。
太陽光発電は適切な方法で撤去・廃棄を
太陽光発電の主要部分である太陽電池モジュールは産業廃棄物なので、環境を守るために適切な方法で廃棄しなければなりません。
2022年7月からは、太陽光発電の廃棄費用を想定した積立義務が導入されているので、あらかじめ費用を用意しておけば安心して専門業者に依頼できます。
太陽光発電の廃棄費用の積立について知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。