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無線給電(ワイヤレス給電)とは?電気が苦手な方にもやさしく解説

無線給電(ワイヤレス給電)とは?電気が苦手な方にもやさしく解説 再生可能エネルギー
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スマートフォンを置くだけで充電できる充電器や、ケーブルなしで充電できる電動歯ブラシ。これらに使われている技術が無線給電(ワイヤレス給電)です。電気を使うのに、なぜコードがいらないのか? この記事では、そんな疑問にやさしく答えていきます。電気が苦手な人でもわかるように簡単な言葉で、具体例を交えながら解説します。

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無線給電とは?

無線給電とは?

画像引用:パナソニック

無線給電とは、電気をコード(ケーブル)なしで機器に送る技術です。英語では「Wireless Power Transfer(WPT)」と呼ばれます。既に商品化されているものとしては、スマートフォンのワイヤレス充電や、電動歯ブラシの充電器などが代表的な例です。

普通は電気を使うには、コンセントと電化製品をケーブルでつなぐ必要がありますが、無線給電ではこのケーブルが不要になります。電気を空間を通じて飛ばすことができるので、見た目もすっきりし、使い勝手も良くなります。

無線給電にはいくつかの方法がありますが、特によく使われているのが電磁誘導方式です。この方法では、電気を送る側と受け取る側の間にコイルを使い、磁界を発生させて電気を送ります。

現在では、スマホやイヤホン、電動歯ブラシなど日常的な製品のほか、電気自動車の充電にも使われ始めています。

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無線給電の仕組み

無線給電の仕組み

画像引用:パナソニック

無線給電には主に3つの方式があります。

方式特徴使用例
電磁誘導方式近距離で効率的に給電。コイル同士の距離が近い必要がある。スマートフォン、電動歯ブラシ
電磁共鳴方式少し離れていても給電可能。コイルの共鳴を使う。電気自動車、家電など
マイクロ波方式長距離送電が可能。ただし安全性と効率に課題あり。宇宙太陽光発電、実験段階の技術

一番身近なのは電磁誘導方式です。例えば、スマホのワイヤレス充電器にはコイルが入っていて、これが磁界を作ります。スマホの中にも同じようにコイルがあり、これが磁界を受けて電気を作り出します。

このように、磁石のような力(磁界)を使って電気を送るのが基本の仕組みです。

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無線給電のメリット

無線給電のメリット

画像引用:パナソニック

無線給電には以下のようなさまざまなメリットがあります。

  1. ケーブルが不要:コードが絡まる心配がなく、スッキリした見た目になります。
  2. 安全性の向上:プラグの抜き差しが不要なので、感電や火災のリスクが減ります。
  3. 防水性の向上:ケーブル接続部分がないことで、防水設計がしやすくなります。
  4. メンテナンスが簡単:端子の劣化や接触不良が起きにくく、長く使えます。

特に医療機器や車両、工場の機械などでは、無線給電によって作業の効率が向上したり、安全性が高まったりしています。また、接続部分がないことで製品の寿命が延びる点も大きな利点です。

大阪万博における無線給電

大阪万博における無線給電

画像引用:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

2025年4月から開始された大阪・関西万博では、無線給電が注目の技術の一つとして展示されています。

おもな展示は以下のとおりです。

  • マイクロ波ワイヤレス給電デモ(株式会社Space Power Technologies)
  • 走行中給電(ダイナミック充電)EVバス(関西電力や大阪メトロなどの企業連合)
  • 光無線給電展示(河村電器産業株式会社)

本項では、これらの無線給電について詳しくご紹介します。

マイクロ波ワイヤレス給電デモ

マイクロ波ワイヤレス給電デモ

画像引用:Space Power Technologies

京都市の株式会社Space Power Technologies(SPT)の展示「コードも電池もいらないワイヤレスでんき」は、大阪ヘルスケアパビリオン内の「リボーン・チャレンジ」ゾーンで行われています。高さ約2mの送電機から5.7GHz帯のマイクロ波を照射し、離れたテーブル上で人形を動かしたり、LEDを点灯させるライブデモを実施。一般公開は世界的にも非常に珍しく、電源やバッテリーなしでの動作を体験できる貴重な機会です。

万博来場者は、コードに縛られない未来のエネルギーの可能性を目の当たりにできます。安全面も考慮されており、アクリルケースと透明な電磁波シールドフィルムでデモエリアを囲み、人体への影響を遮断しています。

参考:Space Power Technologies公式サイト

走行中給電(ダイナミック充電)EVバス

走行中給電(ダイナミック充電)EVバス

画像引用:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

大阪万博では、NEDOの支援プロジェクトの一環として、EVバスが会場とその周辺で走行中に自動で給電される実証実験を実施しています。関西電力や大阪メトロ、大林組などの企業連合が、高速道路に準ずる条件下の道路にコイルを埋設し、そこから供給される電力で走行中にバスを充電する「Dynamic Wireless Power Transfer(DWPT)」方式を採用しています。

この技術が実用化されれば、EVバスは停車せず、運行中に給電できるようになり、充電時間のロスや設備費用を低減しながら持続的運行が可能になります。

参考:NEDO公式サイト

光無線給電展示

光無線給電展示

画像引用:河村電器産業

愛知県瀬戸市の河村電器産業株式会社は、大阪万博で光無線給電による次世代エネルギー供給の展示を実施。4月15日~21日の期間中、光(LEDやレーザー)を利用してケーブル不要で電力を届ける実験的展示が行われました。

同社の公式発表では、「エネルギーをインテリジェントにデザインする」をテーマに、配線なしの給電手法を活用した未来の社会をブースで表現したそうです。光を利用した安全かつ効率的な無線給電技術として、今後の実用化が期待されます。

参考:河村電器産業公式サイト

これら3社の展示は、それぞれ異なる技術をベースとしながら、共通してケーブルのない電力供給を体験可能なもので、未来の生活や社会インフラに向けた先進的な提案として注目されています。

さらに大阪万博で体験できる未来の発電について知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。

無線給電の開発に力を入れている企業

無線給電の開発に力を入れている企業

画像引用:パナソニック公式サイト

無線給電の分野では、世界中の多くの企業が研究と製品開発を進めています。代表的な企業には以下のようなところがあります。

  • パナソニック:家庭用・車載用の無線給電技術を開発中。
  • 東芝:産業機械や医療機器向けの給電システムに注力。
  • WiTricity(米国):電気自動車向けの無線給電技術で先行。
  • Qualcomm(米国):スマートフォン向けの技術「WiPower」を開発。

以下で、各社の無線給電への取り組みを公式情報に基づいて詳しく解説します。

パナソニック

パナソニック

画像引用:パナソニック公式サイト

パナソニックは無線給電技術に積極的に取り組んでおり、特にIoTセンサーや家庭・車載用途での実用化を目指しています。具体的には、おもに次の4つの取り組みが注目されています。

パナソニックグループのエレクトリックワークス社が、米国のスタートアップPHION社との共創で光や電波で電力を送る技術を開発しています。この取り組みはエレクトリックワークス社のアクセラレータープログラムに採択され、最優秀賞を受賞しています。

また、京都大学とのマイクロ波を使う長距離無線電力伝送の共同研究にも力を入れています。この研究では、電池交換や配線工事が不要なIoT機器の実現に取り組んでいます。

横浜市港北区にある「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」では、920MHz帯マイクロ波による室内空間でのセンサー給電実証を進め、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム「Enesphere®」として可視化実験も実施しています。

さらに、IHコイルによるワイヤレス給電の高効率化も研究されています。弱電から強電までの給電に対応するため、コイル形状・検知技術の研究開発を強化。金属異物検知機能も開発中です。

これらにより、パナソニックは日常生活でケーブルなしの電源を使う未来を現実にする技術基盤を築いています。

参考:パナソニック公式サイト

東芝

東芝

画像引用:東芝公式サイト

東芝は以下のように産業・医療分野での無線給電に注力しています。

まず注目したいのは産業センサー向け無線給電です。これは、工場内に分散配置されたアンテナから小型消費電力センサーへ均一に給電するビーム制御技術です。

次に挙げたいのは高度ビームフォーミングです。これは920MHz帯・5.7GHz帯を活用しており、高消費電力カメラなどへの給電も視野に入れた実証実験を実施しています。

そして、人体・他無線への安全配慮も注目したいところです。混在環境下で放射量の低減を達成し、安全で安定した給電制御を実現しています。

このように東芝は、産業現場の無停電センサー運用や医療機器への応用など、信頼性・安全性が求められる用途に強みを発揮しています。

参考:東芝公式サイト

WiTricity(米国)

WiTricityは電磁共鳴方式によるEV向け無線充電において先導的な存在です。具体的には以下のような取り組みを行っています。

  • EV向けワイヤレス充電システム:車両底部の受信コイルと、地面・駐車場に埋め込む送電パッドを統合した「MRシリーズ」を展開し、SAEやISOなどの国際規格に準拠。
  • 車社会・スタンダード化:手間いらずの“置くだけ充電”で、安全性向上やメンテナンスコストの削減を目指し、自動運転車にも対応可能 。
  • V2G対応:EVを蓄電装置として使う「VEHICLE‑TO‑GRID」機能に対応し、再生可能エネルギーの活用を支援。
  • 資金調達と提携:三菱商事による資金支援を受けるほか、QualcommのEV部門(Halo)を買収し、技術力と市場影響力を強化。

参考:WiTricity公式サイト

Qualcomm(米国)

Qualcommはモバイルから自動車まで幅広い領域で、無線給電の普及を支える重要な技術基盤を担っています。具体的な実績は以下のとおりです。

  • 特許ポートフォリオ:近距離無線充電や車両向け誘導方式など、多数の特許を保有(2008〜2011年出願)
  • Halo部門:EV用無線充電技術「Halo」を展開し、後にWiTricityへ売却。その後も同社に出資し技術継承。
  • 公共場所での給電:商業施設や公共空間における無線充電の導入を視野に入れた研究を行っており、制御技術や安全基準整備に注力。

参考:Qualcomm公式サイト

無線給電の将来性

無線給電の将来性

画像引用:パナソニック

無線給電が本格的に実装されれば、特に以下のような分野での活用が期待されています。

  • 電気自動車:走行中に給電できれば、充電のために止まる必要がなくなる。
  • ドローン・ロボット:バッテリー交換なしで長時間動けるように。
  • スマートホーム:家電すべてがコードレス化。
  • 医療:体内に埋め込まれた機器への安全な給電。

課題としては、送電距離の拡大効率の向上安全基準の整備などがありますが、それらを乗り越えれば「電気のWi-Fi」とも言える時代が来るかもしれません。

まとめ

無線給電は、コードを使わずに電気を送る便利な技術であり、すでに私たちの生活の中に取り入れられ始めています。スマホや電動歯ブラシだけでなく、今後は車や工場、医療の現場でも広がっていくでしょう。大阪万博や企業の開発を通じて、より身近で安全な形での普及が期待されます。将来、電気もWi-Fiのようにどこでも使える時代がやってくるかもしれません。

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