初心者の方にも分かりやすいように、カーボン・オフセットの解説をまとめました。
何となく聞いたことがあるという方や、正確な意味を知らないままの方に、カーボン・オフセットの目的や仕組みなどを理解していただけるような内容となっています。
カーボン・オフセットとは?
カーボン・オフセットとは、地球環境の保護を目指すための取り組みの1つです。
まずはカーボン・オフセットの概念と仕組みを簡単に解説します。
カーボン・オフセットの概念
「カーボン」は「炭素」を、「オフセット」は「埋め合わせ」という意味を表しています。つまりカーボン・オフセットは、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガス(GHG)の排出を減らすための手段の1つです。
しかし現実には、人々の生活においてGHGの排出量を減らすことが難しい産業や活動もあります。
例えば産業で言うと、鉄鋼業は全体の約4割を占めるほどCO2の排出量が多く、続いて化学工業や機械製造業の排出量が多くなっています。
仮にCO2の排出量を減らすために産業を縮小すると、国力が落ちてしまって本末転倒です。
ゆえに、国力を落とさずにCO2の排出量を減らそうという現実的な考え方から生まれたのが、カーボン・オフセットの概念です。
環境省では、カーボン・オフセットを次のように定義しています。
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせることをいいます。
引用:カーボン・オフセットフォーラム
カーボン・オフセットの仕組み
カーボン・オフセットには、CO2をはじめとするカーボンの排出を削減する仕組みが確立されています。
基本的な仕組みは、産業などの活動によって生成されたCO2の分を、別の場所で排出されるCO2を削減することによって、トータルで排出量を相殺するという方法です。
排出量を相殺する方法にはいくつかあり、より良い方法を生み出すために今も研究が続けられています。
カーボン・オフセットにより、人々は地球上でのGHG排出を抑制し、気候変動に対する貢献を果たすことができるのです。
カーボン・オフセットの種類
カーボン・オフセットには、おもに次のような種類があります。
- 森林保護・再生
- 再生可能エネルギー
- エネルギー効率改善
- クレジットの活用
以下で、それぞれの詳細を順に解説します。
森林保護・再生
世界中の森林は大量の二酸化炭素を吸収しているため、森林を保護・再生することで、二酸化炭素の排出量を減らすことができます。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーによって、化石燃料による二酸化炭素の排出を減らすことができます。
例えば、太陽光発電・風力発電・地熱発電・バイオマス発電などが挙げられます。
発電所以外では、電気自動車や燃料電池車などの導入も再生可能エネルギーの一種です。
再生可能エネルギーについては、こちらの記事も参考にして下さい。
エネルギー効率改善
建物や機器のエネルギー効率を改善することで、エネルギー消費を減らし、排出を削減することができます。
例えば、壁・天井・窓ガラスなどに断熱効果の高い素材を使用したり、地中熱ヒートポンプを利用して冷暖房を行うことが代表的です。
クレジットの活用
カーボン・オフセットには、「J-クレジット制度」というプログラムがあります。
J-クレジットは、国内外で実施されたCO2削減プロジェクトの実績に基づいて発行され、1クレジットあたり1トンものCO2を削減できる仕組みです。
具体的な利用方法は、企業や個人がCO2などを排出する際に、J-クレジット発行機関からJ-クレジットを購入します。
購入されたJ-クレジットがCO2排出量の削減に利用されることにより、購入者が間接的に環境負荷の軽減に貢献できるのです。
カーボン・オフセットの課題
カーボン・オフセットは、社会全体でCO2排出の削減を目指す取り組みですが、現状ではまだいくつかの課題もあります。
オフセット測定が困難
カーボン・オフセットの課題の1つは、オフセットの効果を測定することが困難という点です。
机上の理論として何トンのCO2が削減できると説いても、実際に削減につながっているかどうかの測定が難しいため、効果が限定的であるという見方もあります。
クレジットの活用が不十分
オフセットの代替としてクレジットを購入する企業の中には、自社によるCO2排出の削減を放棄してしまうケースがあります。
クレジットの本来の目的から外れているので、オフセットの抜け道とならないような対策が必要でしょう。
まとめ
カーボン・オフセットは決して理想を追い求め過ぎず、現実的なレベルでのCO2排出の削減に貢献しています。
クレジットを活用することで誰でも実施できる仕組みであり、自らの削減以上に更なる温室効果ガス削減を進めることもできる社会貢献活動でもあります。
個人の方も、ぜひご利用を検討してみて下さい。