最近、卒FITというワードを見かけることが多くなりましたが、一体何のことか分からず困っている方はいませんか?
この記事では、卒FITとは何かということから、卒FITへの対応方法まで、知識を全くお持ちではない方にも分かりやすいようにやさしく解説します。
卒FITとは?
卒FITとは、FITによる「電気の買取期間」が終了した状態のことをいいます。
FITの期間が終了したことを、卒業になぞらえて「卒FIT」という通称で表現されているのです。
FITの期間中は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで発電された電力を、電力会社が高価な定額で買い取ってくれました。
例えば、家庭用の太陽光発電のほとんどが対象となる10kW未満の設備では、10年間のFIT期間がありました。
つまり、10kW未満の設備では、10年間の買取期間が終了した設備から順に「卒FIT」となります。
そもそもFITとは
FITとは、再生可能エネルギーの普及を目指して2012年に国が取り入れた制度です。
また、FITの前身の制度である「太陽光余剰電力買取制度」は、2009年から導入されています。
再生可能エネルギーで発電した電力を対象に、一定の期間だけ固定価格で買い取ることを電力会社に義務付けています。
買取価格は、発電設備の出力によって区分されており、10kW未満の太陽光発電の場合は、各家庭で使用されなかった余剰電力を10年間買い取る仕組みです。
例えば、2022年度に導入した設備は1kWh当たり17円(税込)、2023年度に導入した設備は1kWh当たり16円(税込)で電力会社が買い取ります。
卒FITは2019年から開始
FITが導入された2012年頃に住宅用太陽光発電を設置した家庭において、卒FITは無視できない問題です。
卒FITは2019年から始まっており、2020年は約20万件が「卒FIT」対象で、2021年も約27万件が対象でした。
大きな注目を集めたことから、卒FITに関連して「2019年問題」という名称が付けられたほどです。
2019年は「FITの終了」ではない
ここで注意すべきことは、2019年にFITが終了したわけではないということです。
2019年問題という通称が抱かせるイメージから、まるでFITが終了したかのように感じられるかもしれません。
正しくは、2009年に「太陽光余剰電力買取制度」が始まって10年が経過した2019年から、毎年順番に「卒FIT」を迎えるということです。
ゆえに、今年2023年に卒FITを迎えるのは、2013年に10kW未満の太陽光発電を導入した方ということになります。
いつ設置したのかがあいまいになっている方は、設置した時期を改めて確認しておきましょう。
卒FITの推移
2019年から始まった卒FITは、以下のように推移しています。
今年2023年には31万件の太陽光発電が卒FITを迎える見込みです。
卒FITへの対応方法は?
卒FITを迎える方が取るべき方法は、おもに次の2つがあります。
- 新たな売電先を探す
- 蓄電池を導入する
以下で、それぞれの詳細を順に解説します。
新たな売電先を探す
FITの買取期間が終了しても、太陽光発電による売電は続けられるので、大手の電力会社以外の新たな売電先を探すという方法があります。
いくつかの新電力会社が卒FIT向けプランを用意しているほか、各自治体でも買取を実施していることがあるので、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
一例として、東京都では家庭からの卒FIT電力を含む買取を行う「とちょう電力プラン」を実施しています。
電力の供給先は、都立特別支援学校や廃棄物埋立管理事務所といった都有施設です。
2030年までに、東京都が所有する全ての施設で使用する電力を、再生可能エネルギー100%にするという目標を立てていることによる取り組みです。
参考:家庭の太陽光余剰電力を東京都へ 卒FIT電力の募集を開始!
蓄電池を導入する
卒FITで売電の単価が下がったことにより、蓄電池を導入する家庭が増えています。
経済産業省・資源エネルギー庁も、家庭に蓄電池を導入することが卒FITへの対策として有効であると推奨しています。
資源エネルギー庁は「どうする?ソーラー」というサイトで卒FITの対象者に役立つ情報を提供中です。
家庭で蓄電池を導入するメリットは、おもに次の2つがあります。
電気代の削減
太陽光発電と蓄電池を併用すると、電気代の削減につながります。
例えば、日中に太陽光発電で発電した電力を蓄電池に貯めておき、朝や夕方にその電力を使用すれば、電力会社から電気の供給を受けなくても済みます。
また、夜間電力の単価が安くなるプランに加入している場合は、夜間に蓄電池に充電して朝や夕方に使用することも、電気代の削減になるでしょう。
停電時などの非常用電源として使用
蓄電池は、災害などによる停電時に非常用電源としても使用できます。
太陽光発電だけでも停電時に役立ちますが、雨天時や夜間には発電できないので、蓄電池があると停電時でもさらに安心です。
例えば、真夏に停電して冷蔵庫や冷房が使えなくなると深刻な影響を受けますが、7kWhの平均的な蓄電池があれば、少なくとも約8時間はどちらも使用し続けることができます。
蓄電池に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
卒FITの対策には蓄電池がおすすめ
卒FITに対して何も対策を取らないでいると、期間終了後には大きく下がった価格で余剰電力を買い取られてしまいます。
蓄電池の導入は電気代の削減につながるのはもちろん、電力の自家消費にもつながるなど、金銭面だけではなく環境面でも良いこと尽くめです。
この機会にぜひ、ご家庭にも蓄電池の導入を検討してみて下さい。