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エネルギーの地産地消とは?事例を初心者の方にもやさしく解説

エネルギーの地産地消とは?事例を初心者の方にもやさしく解説 再生可能エネルギー
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最近、エネルギーの地産地消という言葉を目にする機会が増えてきました。これは再生可能エネルギーとも関連し、私たちが将来安心して暮らせるようになるための重要な取り組みです。この記事では、エネルギーの地産地消について初心者の方にも分かりやすいようにメリットと課題、最新の事例をまとめました。

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エネルギーの地産地消とは?

エネルギーの地産地消とは?

画像引用:一般社団法人低炭素投資促進機構

エネルギーの地産地消とは、限られた地域の中で電力を発電し、その電力を地域の中で使う仕組みです。最近エネルギーの地産地消が普及してきた背景には、電気料金の高騰や地球温暖化など、私たちの生活を脅かしている数々の問題があります。しかしエネルギーの地産地消を導入すれば、地域住民が自分たちで電力をある程度まかなうことができ、停電や価格変動の影響を受けにくくなります。

エネルギーを地産地消するための具体的な方法の例は、屋根に設置した太陽光発電で学校や公共施設などの電気を賄ったり、河川や水路を利用して小水力発電を導入したり、町ぐるみで発電施設・蓄電池・EVなどをつなぐ「マイクログリッド(小さな電力網)」を作ることです。最近では、エネルギーの地産地消を推し進めるために自治体や地域新電力が主役になり、発電と消費を近づける取り組みが広がっています。

電気は発電した場所から消費する場所があまりにも離れていると、送電する間にロスが生じます。この点からもエネルギーの地産地消は、電気を地域で作って無駄なく地域で使うというエネルギーの理想的な形そのものです。

出典:資源エネルギー庁

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エネルギーの地産地消のメリット

エネルギーの地産地消のメリット

画像引用:東京電力

エネルギーの地産地消には、おもに次のようなメリットがあります。

  • 災害や停電などの非常時に強い
  • 環境にやさしい
  • 地域経済が潤う

エネルギーの地産地消のメリットは、まず災害や停電などの非常時に強いことです。エネルギー地産地消のために設置された「地域マイクログリッド」は停電時に重要施設へ優先給電でき、非常時の暮らしを守ります。

環境にやさしいこともエネルギー地産地消のメリットです。発電するエネルギーは再生可能エネルギーによる電力が中心なのでCO₂の排出を減らせるほか、地域で集められた廃棄物なども発電に活用できるケースがあり、無駄なくエネルギーが循環します。

さらに、地域経済が潤うこともメリットです。電気料金として支払うお金の一部が地域内に循環し、エネルギー関連の雇用や投資につながります。雇用が安定すればさらなる消費につながるほか、発電施設に投資すればエネルギー供給の安定や能力の向上にもつながります。

出典:環境省

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エネルギーの地産地消が抱える課題

エネルギーの地産地消が抱える課題

エネルギーの地産地消を実現させるためには、おもに次のような課題の克服が求められます。

  • 資金の確保
  • 電力系統の安定
  • 設備を運用するノウハウ

まず課題となるのは資金の確保です。たとえ小さな地域の中で使用する電気でも、送配電設備には標準電圧6,000ボルトを超える高圧電力を扱える設備が必要になる場合が多いです。また、高圧施設の屋根に太陽光を載せる場合は、受電盤改造や配線工事、逆潮流防止装置などで費用が膨らむため、採算をよく考えて設置する必要があります。一般的には10年以上先を見越して発電設備を導入することになります。

次に課題となるのは、電力系統を安定させることです。例えば太陽光発電の場合、晴天時や低需要時には電気が余るため、再エネの発電を抑える「出力制御」が発生します。九州では近年の太陽光発電の導入量の増加にともない、出力制御の必要性が増える局面が報告されています。つまり発電電力が多いときは、周囲の地域の電力の需給バランスを崩さないように配慮する必要があるのです。

最後に課題となるのは設備の運用ノウハウです。設備を保守するために確かなスキルを持った人材の確保や、データに基づく需給運用など地道な体制づくりが欠かせません。結局のところ、これらの課題は制度と技術と地域力を組み合わせて乗り越える課題だと言えます。

出典:九州電力送配電

エネルギーの地産地消のおもな事例

エネルギーの地産地消のおもな事例

画像引用:資源エネルギー庁

本項では、国内のおもなエネルギー地産地消の事例を紹介します。

神奈川県小田原市|太陽光×蓄電池×EVで災害に強い街へ

神奈川県小田原市では、公共施設や避難所を中心に太陽光発電・蓄電池・EVを組み合わせた「地域マイクログリッド」を導入しています。平常時は太陽光の電気を利用し電気代を削減、非常時には外部電力に依存せず3日間の自立運転が可能です。災害時には避難所や重要施設に電力を優先供給できるため、防災拠点としての役割も強化されています。

さらに、地域新電力との連携によって市民や企業のエネルギー利用も効率化され、環境負荷を減らしながら地域経済を循環させる仕組みが進んでいます。小田原市の事例は「防災×省エネ×地域経済」の好例として全国的に注目されています。

出典:小田原市公式サイト

沖縄県宮古島市・来間島|離島ならではの地域完結型エネルギー

沖縄県宮古島市の来間島では、離島の弱点である電力供給の不安定さを克服するため、太陽光と大型蓄電池を整備し、自営線で島内に電力を供給する「地域完結型システム」を構築しました。通常時は島民の暮らしを支え、観光施設や公共サービスにもクリーンな電力を供給。台風や災害時には必要な施設へ優先的に給電できる仕組みが整っています。

また、このシステムは環境教育や観光資源としても活用され、持続可能な島づくりを支える重要な取り組みとなっています。来間島は、再生可能エネルギーによるエネルギー自立を実現した先進モデルとして全国から関心を集めています。

出典:資源エネルギー庁

福島県葛尾村|復興とエネルギー自立を両立するモデル地域

福島県葛尾村は、原発事故の影響を受けた地域だからこそ「エネルギーの自立」に力を入れています。特定送配電(地域内配電網)の整備と3MW級の大型蓄電池を導入し、災害時には72時間以上の非常用給電を可能にしました。これにより避難所や医療施設などのインフラを守ることができます。

平常時には再エネ電力を地域内で利用し、電気代の削減とCO₂削減を実現。さらにエネルギー設備の運営・保守によって地域に新たな雇用が生まれ、移住促進や復興のシンボルとしても評価されています。葛尾村の事例は、「防災力の強化」「地域活性化」「環境負荷低減」を同時に実現した持続可能な取り組みとして高く評価されています。

出典:資源エネルギー庁

新潟市中央市場|オンサイトPPAで再エネ導入とコスト削減

新潟市中央卸売市場では、地域新電力と連携し「オンサイトPPA」を活用して太陽光発電を導入しました。PPAとは、例えば太陽光発電の場合は事業者が屋根や地上などに太陽光パネルを設置し、発電した電気を長期契約で購入・自家消費する仕組みです。新潟市中央市場では初期費用ゼロで再エネを導入でき、冷蔵施設や照明、空調に利用することで電気代削減につながっています。

また、余剰電力は系統に送電され、地域全体の再エネ利用にも貢献。環境に配慮した市場運営は取引業者や消費者からの信頼にもつながり、持続可能な地域経済を支える新たなモデルケースとなっています。

出典:新潟スワンエナジー

近年ではPPAの制度が確立してきたおかげで、大規模な太陽光発電を比較的導入しやすくなりました。PPAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。

また、エネルギーの地産地消を目指すために、各地で小水力発電の導入も増えています。小水力発電の導入事例を知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。

地産地消はエネルギー問題解消の切り札になる?

地産地消はエネルギー問題解消の切り札になる?

画像引用:資源エネルギー庁

地産地消はエネルギー問題解消の有効な手段の一つではありますが、これだけでは足りません。理由は、再生可能エネルギーの多くは天気に左右されるため、電力が足りない時余る時差を埋める仕組みが必要だからです。具体的には、家庭や工場の蓄電池・EV・空調を束ねて一つの発電所のように動かすVPP(バーチャルパワープラント)や、需要を賢く動かすDR(電力を使用する者が使用量を調整することで需給バランスをとる仕組み)、そして家庭用も含めた蓄電池の活用や市場を通じた調整力の取引が重要です。

出典:一般社団法人電力需給調整力取引所

日本では需給調整市場が整備され、一次~三次の調整力を市場で調達する仕組みが始まっています。加えて、ノンファーム接続や出力制御の見通し公表など、系統面の工夫も進行中です。地産地消×VPP×市場・制度を組み合わせることで、エネルギーの地産地消は一層効果を発揮し、再生可能エネルギーを無駄なく賢く使える社会に近づきます。

再生可能エネルギーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。

まとめ

まとめ

エネルギーの地産地消は「地域で作って地域で使う」ことで、災害に強く、環境負荷を減らし、地域経済を活発にします。一方で、費用や系統制約などの課題があり、VPPや需給調整市場、蓄電池と組み合わせてこそ真価を発揮します。今回紹介した自治体や市場の事例は、地域が主役のエネルギー転換がすでに動き出していることを示しています。

エネルギーの地産地消はさまざまな地域課題を解決できるポテンシャルを秘めています。課題を克服して成熟していけば、将来的にはより安定した強靭なエネルギー社会の実現が期待されるでしょう。

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