海洋エネルギーという名称は、初めて聞く方も多いのではないでしょうか。
電気料金が高騰するなど、厳しい電力事情の中にある現在の日本。
そんな状況を打ち破ろうと、研究・開発が進められているのが、海洋エネルギーです。
この記事では、「海洋エネルギーとは何か?」ということから、その種類や将来性などを、初めて聞く方にも分かりやすく解説します。
海洋エネルギーとは
海洋エネルギーとは、その名のとおり「海が持つエネルギー資源」のことです。
しかし、海が持つエネルギーと言われても、ピンと来ない方が多いのではないでしょうか。
最も分かりやすい例は、海岸からも見ることができる「海の波」です。
海の波は「寄せては返す」と表現されるように、自然の力で永久に動き続けています。
そんな波の力を利用した「波力発電」は、海洋エネルギーを利用した発電方式の1つです。
また、海は表層部だけで波が動いているわけではありません。
地上にいる私たちには分かりませんが、海の中でも海水が絶えず流れており、この力も発電に利用できるほど大きなものです。
さらに、海は温度差も表層部と深海ではかなりの差があり、これもエネルギーとして発電に利用できます。
このように、海には計り知れないエネルギーが眠っているのです。
初心者の方にも分かる!海洋エネルギーの利用例
海洋エネルギーを利用した発電には、おもに次の4種類があります。
- 波力発電
- 潮流発電
- 潮汐発電
- 海洋温度差発電
また、洋上風力発電も広い意味で海洋エネルギーの1つに数えられます。
洋上風力発電については、こちらの記事をご覧ください。
以下で、海洋エネルギーそれぞれの詳細を順に解説します。
波力発電
海の波は、海上の風によって発生し、上下動を繰り返します。
この上下の動きは振幅が10m以上になることもあり、この動きを利用したものが波力発電です。
発電の仕組みは風力発電に近くて、海水の上下動によって発生する空気の流れでタービンの「羽根車」を回転させます。
波力発電には、海上や海中に浮かべて発電する浮遊式と、沿岸に固定して発電する固定式の2種類があります。
潮流発電
海には一定の周期で潮の満ち引きがあり、大量の海水が移動しますが、その海水が流れる力で海中の水車を回転させるのが潮流発電です。
水車はおもに2種類のタイプがあり、海底に水車を設置する固定式と、固定しないで利用する浮遊式があります。
潮の満ち引きは月と太陽の引力によるものなので、規則性があるため、安定した電力供給ができることがメリットです。
潮汐発電
潮汐発電も、潮の満ち引きを利用した発電方式です。
潮流発電は海水の水平移動を利用して発電するのに対し、潮汐発電は海水の満ち引きによる上下動を利用して発電します。
潮汐発電の原理は水力発電に近くて、水力発電のダム湖のような貯水池を備えています。
潮が引くときに、貯水池から流れ出る海水のエネルギーを羽根車に伝えて発電する仕組みです。
また、満潮時にはその逆の動きも電力に変換しています。
海洋温度差発電
海中では表層部と深層部でかなりの温度差がありますが、その温度差を利用して発電するのが海洋温度差発電です。
基本的な原理は、アンモニアなどの沸点の低い物質を蒸発させ、その蒸気でタービンを回転させます。
温度が高い表層部ではアンモニアなどを温めて蒸気にし、温度の低い深層部で冷やして液体に戻すということを繰り返します。
日本の海洋エネルギーの現状は?
波力発電は欧米を中心に研究が進められていますが、日本では岩手県久慈市にある「久慈波力発電所」が国内初の波力発電として稼働中です。
海洋温度差発電は、佐賀大学の上原春男教授が中心となって1994年に発明した「ウエハラサイクル」が有名です。
その技術を応用して、佐賀県伊万里市で30kWの発電設備が試験運転中なほか、沖縄県の久米島では出力100kWの発電設備も試験運転を行っています。
海洋エネルギーの将来性は?
日本は世界第6位の広大な領海と排他的経済水域を持ち、海洋エネルギーの大きなポテンシャルを秘めています。
国内で海洋エネルギーを利用した発電設備は、計画中のものを含めて、数多くのプロジェクトが進行中です。
政府も2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、海洋エネルギーの活用を積極的に後押ししています。
技術は日進月歩で、特に発電効率の向上に力が入れられており、将来的には安定した電源として大きな期待ができるでしょう。
その反面、海洋エネルギーの利用を巡る諸外国との関係や、漁業関係者との意見調整といった問題も抱えています。
いずれにしても、海洋エネルギーの本格的な実用化には、まだ少し時間がかかりそうです。
大きなポテンシャルを持つ海洋エネルギー
国内の海洋エネルギーは、その多くがまだ実験段階ですが、ここ数年で研究・開発活動が飛躍的に増えてきました。
一部の自治体では、企業や大学などと連携して積極的に介入が行われており、海洋エネルギーが少しずつ身近な存在になりつつあります。
近い将来の実用化に期待して、今後の動向に注目していきましょう。