「核融合発電って何?」「原発みたいなもの?」という声をよく耳にします。
再生可能エネルギーの一つとして核融合発電が実用化に向けて動き出しており、マイクロソフトが購入の契約を交わしたというニュースをご覧になった方も多いでしょう。
この記事では、核融合発電とは何なのかという疑問に答え、原発とどう違うかも併せて分かりやすく解説します。
核融合発電とは?
核融合発電とは、「核融合」を人工的に起こすことによってエネルギーを生じさせる発電方法です。
では核融合とは何なのかというと、「原子」を構成する「原子核」が高速でぶつかり合って融合し、別の「原子核」に変化する現象です。
このとき、必ず「軽い原子核」から「重い原子核」に変化します。
原子核が融合するから、「核融合」と呼ぶわけです。
その代表的な現象が、私たちにとって身近な太陽の中で起こっている「水素→ヘリウム」という核融合です。
核融合によって生み出されるエネルギーは、アインシュタインの相対性理論で有名な「E=mc2」の式で表されます。(Eはエネルギー、mは質量、cは光速度)
なぜ核融合発電が注目されている?
核融合発電が注目を集めている背景には、再生可能エネルギーの普及が関係しています。
元々核融合発電は、太陽が40億年以上も燃え続けている仕組みが核融合反応であることが判明して以来、その仕組みを人工的に作り出せないかという発想から研究が始まりました。
核融合発電は、燃料に使用する物質を水から生み出せるので化石燃料を使用せず、CO2を発生しないクリーンなエネルギーということが注目を集めている一つの要因です。
また、原発の危険性が問題となっていることも核融合発電の開発を後押ししています。
核融合発電は、原発と同じように原子レベルで発生する現象から高いエネルギーを取り出すことができ、さらに安全性も高いのです。
このため、原発に取って代わる可能性があるということも、核融合発電が注目されている要因です。
核融合発電は原発とどう違う?
核融合発電は「核融合」、原発は「核分裂」によってエネルギーを生み出すところが違います。
また、それぞれの現象に使用される原子も異なります。
原発ではウランやプルトニウムという高レベルな放射性物質を使用します。
原子炉の中で核分裂が一度始まると、連鎖的に核分裂が発生するため、暴走しないようにコントロールする必要があります。
ここが原発の危険性を表している点で、コントロールに失敗すると爆発の可能性が高まるのです。
一方、核融合発電には、水素の同位元素である「重水素」と「三重水素(トリチウム)」を使用します。
核融合は、核分裂と違って暴走の危険性がないため、爆発などのリスクは格段に低いのです。
この安全性の高さと、CO2を排出しないクリーンなエネルギーということもあって、核融合発電が注目されています。
核融合発電のメリット
核融合発電には、安全性が高い・燃料に困らないという、おもに2つのメリットがあります。
安全性においては、爆発やメルトダウンなど危険な事故が起きるリスクがなく、発生する放射能も原発と比較して1000分の1程度と、わずかな量です。
核融合反応を発生させるためには、核融合炉を太陽の中心温度である1600万度以上という高温に保ち、なおかつ高度な真空状態にする必要があります。
何らかのトラブルでこの条件が壊れると、核融合反応はすぐストップしてしまうので、爆発などが起きることはないのです。
燃料については、重水素と三重水素を使用しますが、これらは水から採取することができるので、ほぼ永久的に使用できます。
核融合発電のデメリット
核融合発電のデメリットは、まだ実用化されていないために多くの費用が必要なことです。
コストを抑えて実用化されるためには、今後さらなる研究が必要でしょう。
核融合発電を実用レベルにまで引き上げるには、安定した電力の供給が必要で、それには核融合反応を継続的に行う必要があります。
核融合反応はとてもデリケートで、すぐにストップしてしまうため、反応を継続するには核融合炉を非常に高レベルな環境に維持しておく必要があり、その点が今後の課題になるでしょう。
また、放射能の発生がゼロではないということもデメリットになります。
核融合発電所が実用化できるようになったとしても、建設するには地域住民の反対も考えられます。
マイクロソフトが核融合発電を導入との報道
2023年5月10日に、マイクロソフトが核融合発電を導入するという報道が世間を賑わせました。
核融合発電の開発を手掛ける米国のヘリオン・エナジー社が、マイクロソフトと契約を交わしたそうです。
マイクロソフトは2028年からの本格的導入を目指していると、ヘリオン・エナジーの公式Twitterで公表されています。
Announcing Helion’s first customer: Microsoft.
— Helion (@Helion_Energy) May 10, 2023
We expect to start producing electricity in the world’s first fusion power plant by 2028, dramatically shortening the timeline for commercially viable fusion energy.
Read more: https://t.co/KLBWrcjU4o
初心者の方にも核融合発電は難しくない
実は、核融合を発電に利用するという発想は1950年代から存在しており、世界各国で研究されていました。
今日まで実用化には至っていませんが、2023年になって核融合発電の実用化に向けて大きな動きがありました。
核融合発電は初心者の方にも決して難しいものではないので、ぜひ今後に注目してください。