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タンデム型太陽電池とは?初めて聞く初心者の方にもやさしく解説

タンデム型太陽電池とは?太陽光発電
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タンデム型太陽電池をご存知でしょうか?

従来の太陽電池の欠点を克服できる可能性を秘めているということで、近年注目を集めている、新しいタイプの太陽電池です。

この記事では「タンデム型太陽電池とは何か?」ということから、メリットや課題、現状などをご紹介します。

初心者の方にも分かりやすいように、できるだけ簡単な言葉で解説していますので、タンデム型太陽電池に興味を持つきっかけとしていただければ幸いです。

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タンデム型太陽電池とは?

タンデム型太陽電池とは、2つ以上の異なる半導体材料を積み重ねた太陽電池です。

タンデムとは、「縦に並んだ」「直列に並んだ」などの意味を持つ英単語に由来しています。

なぜ2つ以上の異なる半導体を重ねているかというと、波長の異なる光を同時に取り込むことができるからです。

太陽の光は、おもに紫外線・赤外線・可視光線から成っています。

これらは波長が異なるため、複数の半導体で太陽光を受けると、その分多くの光を取り込むことができ、発電効率が高くなるのです。

タンデム型太陽電池は、おもに多結晶シリコン半導体にアモルファスシリコン半導体やペロブスカイト半導体を組み合わせて作られています。

近年特に注目されているのが、ペロブスカイト半導体を使用したタンデム型太陽電池です。

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タンデム型太陽電池のメリット

タンデム型太陽電池のおもなメリットは、次の3つです。

  • 発電効率が高い
  • 重量が軽い
  • 柔軟性があり曲げられる

以下で、それぞれの詳細を順に解説します。

発電効率が高い

タンデム型太陽電池は、現在主流の単結晶シリコン太陽電池よりも発電効率が高いというメリットがあります。

その理由は、2つ以上の異なる半導体材料を積み重ねてあり、異なる波長の光を同時に吸収できるためです。

現在、世界中でタンデム型太陽電池の開発が行われていますが、2023年5月の段階でタンデム型太陽電池の最高発電効率は、33.2%です。

サウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学(KAUST)の研究チームが開発したシリコンとペロブスカイトを組み合わせたタンデム型太陽電池によって記録されました。

重量が軽い

タンデム型太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池よりも重量が軽いこともメリットです。

タンデム型太陽電池の重量が軽い理由は、おもに2つあります。

1つは、単結晶シリコン太陽電池よりも薄い半導体を使用していることで、もう1つは、単結晶シリコン太陽電池よりも使用している半導体の量が少ないことです。

タンデム型太陽電池は重量が軽いため、設置できる場所も従来の太陽電池より多くなります。

柔軟性があり曲げられる

タンデム型太陽電池の中でも特にペロブスカイト半導体を使用しているものは、単結晶シリコン太陽電池よりも柔軟性があります。

厚さが非常に薄いためフイルムのように曲げられるので、曲面状の場所にも設置できることがメリットです。

自動車の屋根や、円柱状の建物の壁などにも設置することができるので、太陽光発電の設置場所の選択肢が大きく広がります。

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タンデム型太陽電池の課題

タンデム型太陽電池には多くのメリットがある一方で、実用化に向けていくつかの課題があります。

おもな課題は次の3つです。

  • 製造コストが高い
  • 耐久性が低い
  • 量産が難しい

以下で、それぞれの詳細を順に解説します。

製造コストが高い

タンデム型太陽電池には、製造コストが高いという課題があります。

製造コストが高い理由は、単結晶シリコン太陽電池よりも構造が複雑なため製造に手間がかかることや、使用される材料が高価なことです。

実用化に向けてはコストダウンが必要と言われており、例えば製造プロセスを簡単なものにしたり、安価な材料で代用するなどの開発研究が進められています。

耐久性が低い

タンデム型太陽電池は、耐久性が低く、長期間の使用に耐えるのが難しいという課題もあります。

耐久性が低い理由は、2つ以上の半導体を重ね合わせているため、接合部に欠陥が発生しやすいことと、使用している材料が劣化しやすいことです。

しかし近年では耐久性の向上に力を入れた研究が進められており、成果も出ているので、実用化に近づいています。

量産が難しい

タンデム型太陽電池は、現在の技術では量産が難しいという課題もあります。

量産が難しい理由は、品質が安定しないため、欠陥品が発生しやすいことです。

タンデム型太陽電池は、2枚の半導体を高精度で製造する必要があり、また2枚の半導体を接合するプロセスも非常に精密です。

また、量産が難しいためにコストダウンが進まないことも、実用化のハードルになっています。

高品質な製品を安定して供給するためには、構造や製造プロセスの簡素化が求められるでしょう。


タンデム型太陽電池の最新情報

神奈川県相模原市に拠点を置くベンチャー企業であるPXPは、フレキシブル(柔軟性のある)太陽電池の研究開発を行っており、2023年11月にタンデム型太陽電池全固体電池を組み合わせた最適なセル構造を報告しました。この研究は、アラブ首長国連邦・ドバイで開催された第一回Middle East and North Africa Solar Conferenceで最優秀論文賞を受賞しました。

具体的には、極薄の金属箔を基板兼共通正極として使用し、受光面側にペロブスカイトカルコパイライトタンデム型太陽電池を形成しました。さらに、反対側には全固体電池を組み込むことで、発電機能と蓄電機能を一体化したセル構造を提案しています。この設計により、日中の太陽の動きや天候変化、季節変動などの環境変化に対して、パワーコンディショナー(PCS)を用いずにセル単体で発電・蓄電・放電の電力制御が高効率で自動運転できることを示しています。

ペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム型太陽電池と全固体電池を一体化したセル構造の概略図

ペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム型太陽電池と全固体電池を一体化したセル構造の概略図

引用:PXP

局所的に影のかかりやすい環境(例:壁面設置や車載)では、影となった部分の電力を一体化した蓄電池がアシストすることで、従来型の太陽電池で問題だったモジュール全体の発電電力低下やホットスポットの発生を抑えることができます。さらに、軽量でフレキシブル性があり、割れにくく、耐震性と熱耐性が向上しています。また、安価な材料と量産性に優れた製造プロセスを採用し、低コストを実現しています。

PXPは、太陽電池のデバイス研究と量産技術開発の経験を持つ技術者が集まり、2020年に設立されました。同社は11月2日にペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム型太陽電池で変換効率23.6%を達成し、2023年内に量産検証用パイロットラインを完成させる予定です。ペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム構造は理論変換効率の高い組み合わせであり、30%超の高効率が期待されています。

その他、海外でもタンデム型太陽電池の開発は盛んに行われています。

最新のタンデム型太陽電池、特にシリコンとペロブスカイト材料を組み合わせたものに関する進展は、太陽エネルギー効率の大幅な向上をもたらしました。カリフォルニア州立大学の研究者たちは、33.2%の電力変換効率(PCE)を達成したペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池を開発。タンデムデバイス効率の新記録を樹立したことが2023年4月13日に発表されました。これは、以前の記録である32.5% PCEを上回るものであり、光電変換分野における大きな前進を示しています。

これらのタンデム太陽電池は、ペロブスカイトのトップセルとシリコンのボトムセルの組み合わせを利用しています。ペロブスカイト層は青色光を最適に吸収し、シリコン層は赤色光を効率的に吸収するため、従来の単接合シリコンセルに比べて太陽光を電気に変換する効率が向上しています。この革新は、太陽電池の効率を大幅に向上させることで、世界の再生可能エネルギー目標を達成する上で重要な役割を果たすと期待されています。

さらに、ペロブスカイト太陽電池の製造プロセスをさらに改善するために、人工知能(AI)が活用されています。研究者は、高効率のペロブスカイト太陽電池のスケーラブルな製造につながるプロセスダイナミクスを明らかにするために、AI技術を探求しています。このアプローチは、生産プロセスを最適化し、材料品質やセル安定性などの課題に対処することを目指しており、よりコスト効率の良い、広く普及可能な太陽エネルギー解決策につながる可能性があります。

これらの進展は、タンデムペロブスカイト/シリコン太陽電池が太陽エネルギーの風景を変える可能性を示しています。より高い効率を達成し、スケーラブルな製造方法を探求することで、太陽電池は太陽エネルギーのコストを大幅に削減し、世界中でよりアクセスしやすく、持続可能なエネルギー源となる可能性があります。

日本のタンデム型太陽電池の現状は?

先ほどご紹介したPXPの他に、日本のタンデム型太陽電池をリードしてきたのは、株式会社東芝です。

タンデム型太陽電池は、異なる性質の半導体を組み合わせることで、面積を増やさず太陽電池の高出力化を図る手法として研究が進められてきました。

しかし、従来のタンデム型太陽電池には、光吸収層をポテンシャル・バリアなしに接続するための「トンネル接合層」が必要でした。

発電効率向上のための足かせとなっていたうえに、コストが高くなる原因でもあり、実用化を困難にしていたのです。

東芝の新しいタンデム型太陽電池

近年、東芝は独自のタンデム型太陽電池の研究を進めており、透過型亜酸化銅(Cu2O)と従来の結晶シリコン型太陽電池を組み合わせたタンデム型太陽電池を開発しています。

このタンデム型太陽電池は、30%以上の発電効率を視野に入れており、実用化目標は2025年です。

30%以上の発電効率のタンデム型太陽電池が実現すれば、電気自動車(EV)の屋根部などに設置して「充電しなくても走れるEV」が実現できます。

参考:東芝公式サイト

シャープの新しいタンデム型太陽電池

日本で最も変換効率の高いタンデム型太陽電池を開発している企業の一つはシャープです。シャープは、シリコンタンデム太陽電池で33.66%の世界最高効率を達成したと2023年10月27日に発表しました。

この成果は、従来のトリプル接合太陽電池よりも材料コストを削減できる新しい構造により高効率化を実現したものです。

参考:シャープ公式サイト

日本発の技術「ペロブスカイト太陽電池」

タンデム型太陽電池のメリットを飛躍的に向上させたのが、日本で開発されたペロブスカイト太陽電池です。

ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力教授が発明した新しいタイプの太陽電池で、「曲がる太陽電池」と呼ばれています。

2009年に最初のペロブスカイト太陽電池が作られて以来、改良が繰り返されてきました。

今や次世代の太陽電池として大いに期待されており、ペロブスカイト太陽電池の開発は政府も後押ししています。

ペロブスカイト太陽電池の社会実装

引用:資源エネルギー庁「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトに 関する研究開発・社会実装計画(案)の概要

ペロブスカイト太陽電池によって構成されるタンデム型太陽電池は、すでに世界中で研究が進められており、現在は日本が他国の勢いに押されている状況です。

貴重な純国産技術ですから、再び日本が世界をリードできるように、国内企業や研究者の方々の奮起を期待します。

ペロブスカイト太陽電池については、こちらの記事も参考にして下さい。

【まとめ】タンデム型太陽電池は将来性抜群

タンデム型太陽電池は、現在主流の単結晶シリコン太陽電池よりも発電効率が高く、将来の太陽電池の主流になると言われている技術です。

まだ本格的な実用化に至っていない段階ですが、発電効率の向上により、太陽光発電のコスト削減につながることが期待されています。

また、柔軟性を活かして屋根や壁などの曲面にも設置することができ、太陽光発電の設置場所の選択肢が広がるでしょう。

タンデム型太陽電池が普及すれば、地球温暖化対策に大きく貢献することができると期待されているので、今後もぜひ注目して下さい。


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