環境にやさしい設備として地中熱ヒートポンプが注目されていますが、一般家庭でも導入できることをご存知でしょうか。省エネのために、地中熱ヒートポンプをご家庭に導入したいとお考えの方もいるでしょう。この記事では、家庭用の地中熱ヒートポンプのおすすめ施工業者を7社ご紹介します。
地中熱ヒートポンプとは?
まずは、地中熱ヒートポンプの基礎知識を簡単におさらいしておきましょう。
地中熱ヒートポンプは、地面の中にある熱エネルギーを利用して、家や建物を暖めたり冷やしたりするシステムです。地中の温度は年間を通じて安定しているため、夏は涼しく、冬は暖かいという特徴があります。
このシステムは、地中に埋めたパイプを通して熱を交換し、少ない電力で効率よく冷暖房を行うことができます。例えば、1の電力で3〜5倍の熱エネルギーを得られるため、省エネで環境に優しい技術です。
また、二酸化炭素(CO₂)の排出が少なく、地球温暖化の防止にも貢献します。これらの理由から、地中熱ヒートポンプは、エコで快適な未来の冷暖房システムとして注目されています。
地中熱エネルギーの基礎知識については、こちらの記事も参考にして下さい。
それでは早速、家庭用地中熱ヒートポンプの施工業者を見てみましょう。
株式会社コロナ

引用:コロナ公式サイト
株式会社コロナは、地中熱ヒートポンプシステム「GeoSIS(ジオシス)シリーズ」を提供しています。このシステムは、地中の安定した温度を利用して、家庭内の冷暖房や給湯を効率的に行うものです。
施工の特徴
- 多様な暖房方式への対応:ジオシスシリーズは、壁掛け冷温水ファンコイルユニットやラジエーター、パネルコンベクター、フロアマット、フロアパネル、温水ルームヒーターなど、多彩な暖房機器と組み合わせることが可能です。これにより、各家庭のニーズや住宅環境に合わせた柔軟な暖房設計が実現できます。
- 冷暖房の一体化:ジオシスシリーズは、暖房だけでなく冷房機能も備えており、年間を通じて快適な室内環境を提供します。これにより、季節ごとに異なる機器を使用する必要がなく、省スペース化と利便性の向上が図れます。
- 全国対応可能:コロナの地中熱ヒートポンプシステムは、全国各地で施工可能です。2024年3月31日時点で、全国に66ヵ所の営業拠点(支店・営業所)を展開しています。北海道から沖縄まで日本全国に配置されており、各地域での迅速な対応とサービス提供を可能にしています。
参考:コロナ公式サイト
有限会社ノースランドホーム

引用:ノースランドホーム公式サイト
有限会社ノースランドホームは、北海道山越郡八雲町に本社を置く企業です。地中熱ヒートポンプシステムの施工において、独自の工夫と技術で高い評価を得ている地域密着型の企業です。
施工の特徴
- コスト削減への取り組み:地中熱ヒートポンプシステムは、通常、掘削工事や機器設置に高額な費用がかかるとされています。しかしノースランドホームでは、パイル工事用のオーガーを活用し、深さ約10メートルの浅い穴を掘削することで、掘削費用を約15万円に抑えることに成功しました。また、採熱管には安価な架橋ポリエチレン管を採用し、全体の施工費用を約120万円に抑えています。
- 高断熱・高気密設計との組み合わせ:同社のモデルハウスは、延床面積約147平方メートルで、熱損失係数は設計値で1.31W、相当隙間面積は実測で0.23平方センチメートル/平方メートルと、次世代省エネ基準を上回る性能を持っています。この高性能な住宅設計により、暖房負荷を低減し、効率的な地中熱利用を可能にしています。
- 効果的な放熱システムの導入:1階部分には床下空間に8台の放熱器を設置し、床下を暖めることで室内全体を効率的に暖房しています。また、2階には3台のパネルヒーターを配置し、全館暖房を実現しています。さらに、夏季にはコンプレッサーを停止し、地中の涼しい温度を利用してファンコイルユニットで冷風を作り出し、冷房を行う工夫もされています。
施工実績
ノースランドホームが手掛けたモデルハウスでは、以下のような実績が報告されています。
- ランニングコストの低減:ヒートポンプ暖房の1ヶ月あたりの電気代は約1万円で、従来の暖房システムと比較して経済的です。
- 高い成績係数(COP)の実現:冷媒の調整と放熱量の増加により、COPは最大で3.6程度(1kWの電力で3.6kW分の暖房や冷房エネルギーを得られる)まで向上しています。
- 安定した室内環境:室温は概ね20℃以上に保たれ、送水温度は40℃台前半で推移し、地中温度も安定しています。
これらの成果により、ノースランドホームは地中熱ヒートポンプシステムを戸建て住宅の標準仕様として採用する意向を示しています。
参考:北海道住宅新聞社
住協建設株式会社

引用:住協建設公式サイト
住協建設株式会社は、地中熱ヒートポンプシステムの施工において、独自の技術と工夫を取り入れています。特に「直膨式地中熱ヒートポンプ」という新しいシステムを採用しており、これにより従来の方法よりも効率的かつ経済的な施工を実現しています。
施工の特徴
- 浅い採熱井戸の利用:従来のシステムでは、地中熱を採取するために約100メートルの深さの井戸を掘る必要がありました。しかし、住協建設の「直膨式」では、深さ約12メートルの浅い井戸を15カ所程度設置する方法を採用しています。これにより、掘削費用や施工の手間を大幅に削減することが可能となりました。
- 地盤改良との組み合わせ:新築住宅の場合、地盤改良の際に使用する鋼管杭の中に採熱用のチューブを挿入することで、追加の井戸を掘る必要がなくなります。これにより、施工スペースの節約とコスト削減が実現されています。
- シンプルな熱交換構造:「直膨式地中熱ヒートポンプシステム」は、熱交換の構造が単純で、冷媒を循環させるためのポンプが不要です。部品点数が少ないため、故障のリスクが低く、メンテナンスも容易です。これにより、ライフサイクルコストの低減が期待できます。
施工実績
住協建設は、所沢市山口において「直膨式地中熱ヒートポンプシステム」を導入したモデルハウスを建設しています。このモデルハウスでは、4人家族を想定し、以下の設備を導入しています。
- マルチエアコン3台:家全体の冷暖房を効率的に行うためのエアコンを設置しています。
- 460リットルの給湯タンク:大量のお湯を必要とする家庭でも対応可能な大容量の給湯タンクを備えています。
- 室外機と地中熱交換機:地中熱を効果的に利用するための設備を導入しています。
これらの設備により、少ない電力で地中熱を活用し、家全体の冷暖房や給湯をまかなうことが可能となっています。また、通常のエアコンと比較して省エネ性能が高く、ランニングコストの削減やCO₂排出量の低減にも寄与しています。
参考:住協建設公式サイト
株式会社長府製作所

引用:長府製作所公式サイト
株式会社長府製作所は、住宅関連設備において豊富な実績を持ち、そのノウハウを活かして地中熱を利用したヒートポンプシステムを提供しています。
施工の特徴
- 高効率なエネルギー利用:同社の地中熱ヒートポンプシステムは、使用する電力の約4倍の暖房エネルギーを生成します。これは、投入した電力に対して4倍の熱エネルギーを得られることを意味し、高い省エネ性能を持っています。
- 年間を通じた快適性:地中の温度は年間を通じて安定しているため、このシステムは季節に関係なく安定した冷暖房を提供します。冬は「ひだまり」のような暖かさ、夏は「木陰」のような涼しさを実現し、快適な室内環境を保ちます。
- 環境への配慮:地中熱という自然エネルギーを利用することで、CO₂の排出を削減します。また、冷房時の排熱を外気に放出しないため、都市部で問題となっているヒートアイランド現象の抑制にも寄与します。
施工実績
具体的な施工実績の数値については、公開されている情報が限られているため詳細は不明です。しかし、長府製作所は、地中熱ヒートポンプシステムの導入により、エネルギー消費量の削減やCO₂排出量の削減に成功していると報告しています。例えば、地中熱ヒートポンプを導入した施設では、空調設備において31%のエネルギー消費量削減が達成されたとの事例があります。
参考:長府製作所公式サイト
瑞穂建設株式会社

引用:瑞穂建設公式サイト
瑞穂建設株式会社は、自然のエネルギーである地中熱を活用した「GEOパワーシステム」を採用し、住宅の冷暖房や換気を効率的に行う施工を行っています。
施工の特徴
- 24時間計画換気システム:GEOパワーシステムは、地中熱を利用して基礎空調を行う24時間計画換気システムです。これは、冷暖房のように急激に温度を調整するのではなく、換気をしながら建物全体の温度を緩やかに調整し、冷暖房の空調負荷を軽減します。
- 季節に応じたモード:夏モードでは、暑くて湿った空気を地中熱で冷やし、床下から吹き出します。ジオパイプ内では「冷気の供給」の他、自然の原理を利用した「除湿」や「空気浄化」の効果も期待できます。冬モードでは、冷たい空気を地中熱で温め、床下から吹き出します。基礎部分が蓄熱層となっているため、貴重な自然の暖気を有効利用できます。
- 健康的な室内環境の提供:GEOパワーシステムを導入した室温曲線では、外気温と贅沢ラインの中間の健康ラインでの生活を推奨しています。これにより、体温調整機能や免疫機能の邪魔をしない、体に優しい温度環境づくりが可能となります。
施工実績
具体的な数値は公開されていませんが、GEOパワーシステムの導入により、冷暖房エネルギーを56%削減した一般住宅の実績があります(条件により異なります)。また、CO₂排出削減につながり、地球環境に優しい取り組みとして評価されています。
参考:瑞穂建設公式サイト
株式会社ダイワテック

引用:ダイワテック公式サイト
株式会社ダイワテックは、地中熱と空気熱を組み合わせた「ハイブリッドパワー暖房システム」を提供しています。このシステムは、自然のエネルギーを最大限に活用し、効率的で環境に優しい暖房を実現しています。
施工の特徴
- 地中熱と空気熱の併用:ダイワテックのシステムは、地中熱と空気熱の両方を利用することで、外気温の影響を受けにくく、安定した暖房効果を提供します。これにより、寒冷地でも効果的に暖房が可能となります。
- 蓄熱式床暖房の採用:地中熱を活用した蓄熱式床暖房を導入することで、床全体が暖かくなり、室内の温度を均一に保つことができます。これにより、快適な居住空間を提供します。
- 環境負荷の低減:再生可能エネルギーである地中熱と空気熱を利用することで、化石燃料の使用を抑え、CO₂排出量の削減に貢献しています。また、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与します。
施工実績
実績に関する具体的な数値は公開されていませんが、ダイワテックのハイブリッドパワー暖房システムは、多くの住宅で導入されており、冷暖房費の節約や快適な室内環境の提供に成功しています。また、地中熱を利用した融雪・凍結防止システムや、農業分野での暖房栽培への応用など、多岐にわたる分野での実績があります。
参考:ダイワテック公式サイト
株式会社エステックス

引用:エステックス公式サイト
株式会社エステックス(旧・ササキ石油販売)は、地中熱を活用したヒートポンプシステムを提供している地域密着型の企業です。
施工の特徴
- 高効率なエネルギー利用:エステックスが取り扱う「A.T.O.Mジオサーマルヒートポンプシステム」は、家庭用から産業用まで幅広い能力を持ち、外気温に左右されずに高効率で稼働します。これにより、年間を通じて安定した性能を発揮します。
- 多機能性:このヒートポンプシステムは、1台で給湯、暖房、冷房が可能です。従来はエアコンやエコキュートなど、複数の機器を設置する必要がありましたが、このシステムではそれらを一体化し、スペースやコストの削減に寄与します。
- 環境への配慮:地中熱は再生可能なエネルギーであり、化石燃料と異なり枯渇する心配がありません。また、CO₂排出量の削減にもつながり、地球温暖化防止に貢献します。
- 静音性:空気熱ヒートポンプと比較して、稼働音が少ないため、住宅地や静かな環境でも導入しやすい特徴があります。
施工実績
施工実績に関する具体的な数値は公開されていませんが、エステックスの地中熱ヒートポンプシステムは、一般住宅から工場などの大規模施設まで、多岐にわたる導入実績があります。これらの導入により、ランニングコストの削減やCO₂排出量の削減といった効果が報告されています。
参考:エステックス公式サイト
まとめ
今回の記事では、地中熱ヒートポンプを戸建て住宅に設置する際の施工業者をご紹介してきました。各企業それぞれに特徴があるので、ご自身の目的に合った施工業者が見つかるのではないでしょうか。
この記事を通じて、多くの方々に地中熱ヒートポンプに興味を持っていただければ幸いです。
地中熱ヒートポンプの施工事例を知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。