ごみ発電というものを聞いたことがあるでしょうか?
かつては焼却場で燃やすだけだったごみを燃料とする発電所が、全国各地で次々と建設されています。
この記事では、ごみ発電をこれから勉強する方や、初心者の方にも分かりやすいように、やさしく解説します。
ごみ発電とは?
ごみ発電とは、各家庭や企業などから出る「ごみ」を燃料として発電する技術です。
日本ではおもに地方自治体が「ごみ発電所」を運用しており、小規模な施設が多いですが、まれに大規模な施設もあります。
近年では環境保護の意識が高まっていることなどから、ごみ発電に高い関心が向けられており、エネルギー効率の向上や資源を有効活用する手段として期待されています。
ごみ発電のメリット
ここでは、ごみ発電のメリットを確認してみましょう。
環境保護に貢献
ごみ発電は、廃棄物処理場などから排出される有害なガスや、廃棄物そのものの量を減らすことに役立ち、環境の保護につながっています。
自然界へ直接廃棄される有害物質が減るため、環境への負荷を軽減できるのです。
また、発電における化石燃料の使用量も減らせるため、CO2排出量の削減にも貢献しています。
エネルギーの有効活用
ごみ発電は、従来は廃棄していた物からエネルギーを取り出しており、エネルギーの有効活用につながっています。
発電することで得られるエネルギーは、地域住民の生活に利用することができます。
また、廃棄物を極限まで利用することにより、結果的に廃棄処理の効率化にもつながっているのです。
地域経済の活性化
ごみ発電の運用は、地域経済の活性化にもつながります。
ごみ発電所の建設や運用には多くの人材や資金が必要で、新たな雇用も生み出すため、地域の経済活動が活発になる要因となります。
また、ごみ発電によって生産されたエネルギーを利用することで、地域の経済発展に貢献することもできるでしょう。
ごみ発電のデメリット
ごみ発電のおもなデメリットは、以下の通りです。
悪臭の被害
煙や廃棄物の臭いなどが発生し、周辺住民に影響を与えることがあります。
煙は高い煙突から排出されますが、風下では臭うこともあるでしょう。
コスト
ごみ発電は、コスト面でも問題を抱えています。
他の発電所にはない特殊な装置がたくさん使用されているので、整備や保守が高コストです。
また、発電設備にもこまめな整備や保守が必要で、費用がかかります。
コスト面は、出力や発電効率が低い小規模なごみ発電所のほうが特に問題となります。
廃棄物の処理
ごみ発電では、廃棄物の処理も問題です。
例えば、発電に役立たないごみは一緒に燃やしてしまうわけにいかないので、個別に適切な処理が必要です。
また、発電設備から排出される有害なガスも、適切に処理しなければなりません。
これらの問題は、ごみ発電所が単独で対応することは困難で、廃棄物処理場などと連携することが重要です。
技術的な問題
ごみ発電は、設備のメンテナンスに高度な技術が必要で、発電効率にも直接影響します。
例えば、ガス発生装置などの故障が発生すると、技術力不足の場合は発電量の低下や停止となる場合があります。
設備の保守を行う際にも、発電を停止しなければならないことがあり、停止が長引くと発電量が減ってしまいます。
また、廃棄物から発生する汚染物質などへの対応も、専門的な知識が必要です。
日本のごみ発電の先進的な取り組み例
さまざまな課題を抱えながらも、日本のごみ発電は年々進化しています。
ここでは、先進的な取り組みを導入しているごみ発電所を3例ご紹介します。
NPLW バイオマスパワープラント
名古屋市に建設された初めてのバイオマス発電所で、2022年2月17日から稼働しています。
カーボン・オフセットにより、化石燃料を使用して発電した場合に比べて年間7,480トンものCO2排出量の削減に貢献している発電所です。
「NPLW バイオマスパワープラント」の特徴は、燃料の85%を占めている「木質系のごみ」にあります。
「木質系のごみ」とは、名古屋市内の公園や街路樹などを剪定した際に排出される枝葉や、一般家庭の樹木を剪定した際に排出される枝葉のことです。
これは全国でも珍しい取り組みで、年間25,500トンもの木材系ごみが発電に使用されるることにより、ごみ焼却量の削減に貢献しています。
年間発電電力量は1,330万kWhで、これは約4,000世帯分の年間消費電力に相当します。
発電出力は1,990kWと控えめですが、これはバイオマス発電の弱点の1つである「燃料供給の不安定さ」を考慮して、適度に出力を抑え、一年間休みなく発電することを重視した結果です。
こちらは当バイオマス発電所の外観です。
木質チップが貯蔵されていると思われる建屋の外壁は、カラフルにペインティングされています。
この壁画は、ストリートアーティストユニット『HITOTZUKI』が「生命の尊厳」をテーマに、自然環境を守る大切さを伝えるために描いたそうです。
バイオマス発電については、こちらの記事も参考にして下さい。
クリーンプラザよこて
「クリーンプラザよこて」は、秋田県横手市にあるごみ処理施設です。
かつては市内に3ヶ所あったごみ処理施設を1つに統合して、2016年から稼働を開始しました。
可燃ごみを焼却する際の熱で蒸気を発生させ、タービンを回転させて発電しています。
発電した電気は施設内で使用されるほか、市内の小中学校にも電気が送られるなど、子どもたちの成長にも貢献している施設です。
処理能力は1日あたり95トンで、2つの炉から熱を回収しています。
クリーンプラザよこての特徴は、市民がごみを自己搬入することができるなど、発電の燃料として余すところなく役立てていることです。
施設内にはリサイクルセンターも併設しているので、リサイクル可能な資源はしっかり再利用されています。
また、不用品として持ち込まれた家具などは希望者に提供する取り組みも行っており、サスティナブルな姿勢が高く評価されている施設です。
堺市クリーンセンター
大阪府堺市には、ごみ発電を行っている「クリーンセンター」が臨海部と内陸部の2ヵ所にあります。
そのうち内陸部にある「クリーンセンター東工場」は、全国で初めて清掃施設と発電施設が併設されました。
発電形式にも特徴があり、DSS運転と呼ばれる高効率なシステムを採用。
DSSとは、1日のうちに起動と停止を行うことを意味しています。
具体的には、電力消費の多い日中に多く発電し、深夜は発電を停止するなど、無駄な発電をしないシステム。
出力は日中が16,500kW、夜間は10,070kWと、メリハリをつけています。
蒸気タービンとガスタービンを組み合わせた「コンバインドサイクル」を採用していることが、このような臨機応変な発電を可能にしています。
このような先進的な技術の導入が高く評価された堺市クリーンセンターは、資源エネルギー庁長官賞を受賞しました。
ごみ発電は自治体ごとの特徴が印象的
ごみ発電は、従来は焼却するしかなかった生活ごみを有効活用した、無駄の少ない画期的なシステムで、自治体ごとの特徴が表れていることも印象的です。
問題点はまだ多いかもしれませんが、このような取り組みが実用化されていることは将来的に明るい兆しと言えます。
今後も環境に優しい発電に関する情報を発信していきますので、ご期待ください。
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