近年、日本のエネルギー政策において再生可能エネルギーの重要性が増す中、新たな設置スタイルとして注目を集めているのが垂直設置型太陽光発電です。従来の斜めにパネルを置く方法とは一線を画すこの技術について、2026年現在の最新情報を踏まえて詳しく解説します。
垂直設置型太陽光発電とは
垂直設置型太陽光発電とは、太陽光パネルを地面に対して垂直(90度)に設置する発電方式のことです。
従来の太陽光発電は、太陽に対して最も効率よく光を受けられるよう、30度程度の傾斜をつけて設置するのが一般的でした。しかし、垂直設置型は主に両面受光型パネルを使用し、太陽の通り道に合わせてパネルを立てて並べます。これにより、これまでは設置が難しかった狭小地や積雪地域、さらには農地や駐車場といった場所での発電が可能になりました。特に、パネルの両面で光を吸収できるため、朝日と夕日の両方を効率よく電力に変えられるのが最大の特徴です。
例えば、パネルを東西向きに垂直に設置した場合、太陽が低い位置にある午前中と午後の2回、発電のピークが訪れます。これはダブルピークと呼ばれ、日中に電力が余りがちな従来の設置方法とは異なる発電パターンを描きます。また、フェンスのように設置できるため、道路の脇や駐車場の仕切りとして活用されるケースが増えています。
つまり、垂直設置型は「場所を選ばない」「時間帯を分散して発電できる」という、日本の土地制約や電力需要の課題を解決する次世代の太陽光発電スタイルなのです。
垂直設置型太陽光発電のメリット
垂直設置型太陽光発電の最大のメリットは、積雪による発電低下を防げることと、土地の有効活用ができる点にあります。
まず、日本特有の課題である雪国での運用において、垂直設置は非常に有利です。パネルが立っているため、表面に雪が積もることがほとんどなく、冬場でも安定した発電が期待できます。さらに、地面に積もった雪が光を反射するアルベド(反射光)をパネルの背面で受けることで、むしろ冬の方が発電効率が上がるケースもあります。また、設置面積が極めて小さいため、パネルの下や間をトラクターが通ったり、家畜が放牧されたりすることが可能で、農業と発電を両立させるソーラーシェアリングに最適です。
北海道などの豪雪地帯では、従来の傾斜型パネルは雪の重みで破損したり、除雪作業に追われたりすることが課題でした。しかし、垂直設置型を導入した農場では、除雪の手間が省けるだけでなく、パネルが風除けの役割を果たし、作物の保護にもつながっています。また、雨によって汚れが流れ落ちやすいため、メンテナンスの頻度を下げられるという運用上の利点も報告されています。
雪に強く、土地を塞がない垂直設置型太陽光発電は、特に雪国や農家にとって、これまでの太陽光発電の常識を覆す画期的な選択肢となっています。
垂直設置型太陽光発電の課題
垂直設置型太陽光発電の課題は、強風への対策が必要になることと、設置コストが割高になりやすい点です。
垂直に立ったパネルは、風の影響をまともに受ける「帆」のような状態になります。そのため、台風などの強風に耐えられるよう、架台(パネルを支える台座)を非常に強固にする必要があり、基礎工事にも高度な技術が求められます。この補強が必要な分、一般的な傾斜型に比べて部材費や工事費が高くなる傾向があります。また、パネル同士が影を作りやすいため、広い敷地に設置する際には、列と列の間に十分な間隔を空ける必要があり、レイアウト設計には専門的な知識が不可欠です。
環境省の資料によると、垂直設置型太陽光発電は従来の方式に比べて1kWあたりの初期投資が約1.2倍〜1.5倍程度になる場合があります。ただし、これは冬場の売電収入アップや除雪コストの削減で相殺できる可能性がありますが、単純な「安さ」を求める場合にはハードルとなります。また、設置場所の風況調査を怠ると、予期せぬ突風で設備が損傷するリスクもあるため、信頼できる施工業者の選定が重要です。
垂直設置型太陽光発電はメリットが多い一方で、風圧対策やコスト面での緻密なシミュレーションが必要であり、導入にあたっては専門家による事前のリスク評価が欠かせません。
垂直設置型太陽光発電の取り扱い業者
垂直設置型太陽光発電は特殊な架台と設計が必要なため、実績のある業者が限られます。ここでは、日本国内で先駆的な取り組みを行っている主要な業者を紹介します。
ルクソールソーラー(Luxor Solar)
ドイツに本社を置く世界的な太陽光パネルメーカーですが、日本国内でも垂直設置型で非常に高いシェアを誇ります。特に両面受光型パネルの品質に定評があり、日本の厳しい気候条件に合わせた専用の架台システムを提供しています。
エア・ウォーター(Air Water)
産業ガス大手ですが、エネルギー事業の一環としてVERPA(ヴァルパ)という垂直設置型太陽光発電システムを展開しています。主に駐車場のフェンスや仕切りとして活用する提案に強く、都市部の限られたスペースを有効活用するソリューションを得意としています。
カネカ(Kaneka)
日本の化学メーカーとして知られるカネカは、建物一体型(BIPV)や垂直設置型のオンサイトPPA(電力販売契約)モデルを推進しています。特に北海道などの寒冷地において、自治体や企業と連携した大規模な導入プロジェクトを数多く手掛けています。
参考:カネカ公式サイト
ネクストエナジー・アンド・リソース
自然エネルギーの普及を牽引する国内メーカーで、垂直設置専用の架台「UP-Stand」シリーズなどを提供しています。営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)への知見が深く、農業従事者向けのサポート体制が充実しているのが特徴です。
また、ソーラーシェアリングについては、こちらの記事も参考にして下さい。
垂直設置型太陽光発電の導入事例
垂直設置型は、その特性を活かして全国の様々な場所で導入が進んでいます。
- 農場(栃木県足利市): 水田の中に垂直パネルを設置。パネルの間をコンバインが走行でき、稲の収穫量にほとんど影響を与えずに発電を行っています。
- 自治体(北海道沼田町): 「ほろしん温泉」の施設にカネカの垂直パネルを導入。豪雪地帯でも冬の電力を確保し、非常時の避難所としてのレジリエンス(防災力)を強化しています。
- 大学(帯広畜産大学): 構内の実習圃場に垂直パネルを設置し、作物への日照影響や積雪時の発電効率を測定する大規模な実証実験を行っています。
- 工場や駐車場: 敷地境界のフェンスを太陽光パネルに置き換える事例が増えています。防犯と発電を両立させる合理的な解決策として注目されています。
ソーラーシェアリングの導入事例については、こちらの記事も参考にして下さい。
まとめ
垂直設置型太陽光発電は、両面受光パネルを活用し、雪に強く土地を有効活用できる革新的な発電方式です。強風対策やコスト面での課題はありますが、冬の発電量維持や農業との両立といった、日本特有のニーズに応える大きな可能性を秘めています。
これからの脱炭素社会において、垂直設置型太陽光発電はただのパネルではなく、フェンスや防風林のような役割を兼ね備えた多機能なインフラとして、私たちの生活に溶け込んでいくでしょう。
参考リンク:




