野立て太陽光発電をご存知でしょうか?
現在使用していない土地や、かつて農業用地として使用していた休耕地を有効に活かす方法はないかと頭を悩ませている方には、野立て太陽光発電はおすすめです。
この記事では、初心者の方が野立て太陽光発電を設置するために、あらかじめ知っておくと役に立つ基本的な情報をお伝えしています。
野立て太陽光発電とは?
野立て太陽光発電とは、土地に直接太陽光パネルなどを設置して発電を行う形式の太陽光発電システムです。
その多くは、架台とよばれる金属製の台に太陽光パネルが設置されており、おもに市街地から離れた郊外で見かけることが多いでしょう。
野立て太陽光発電には家庭用と産業用があり、家庭用は発電した電気をおもに自宅で使用し、産業用は発電した電気をすべて電力会社に売電します。
太陽光発電は難しいというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、この記事で基礎的な知識を抑えれば、初心者の方でも決して難しくはありません。
野立て太陽光発電は、農地を転用して発電設備を設置するケースが多くなっていますが、最近では農地のまま太陽光発電を設置する「ソーラーシェアリング」とよばれる運用方法も増えています。
ソーラーシェアリングについては、こちらの記事で詳しく紹介しているので参考にして下さい。
初心者でもできる野立て太陽光発電のメリットとは
野立て太陽光発電には以下のようなメリットがあり、初心者の方でもしっかり手順を踏んで準備すればメリットを受けられます。
安定した収入が見込める
野立て太陽光発電は、長期間安定した収益が見込めることがメリットです。
経済産業省資源エネルギー庁では、太陽光発電の電気の買取価格が決められており、その内容は以下の通りです。
1kWhあたり調達価格等/基準価格 入札制度適用区分 50kW以上
(入札制度対象外) 10kW以上
50kW未満 10kW未満 2021年度
(参考) 入札制度により決定
(第8回11円/第9回10.75円/
第10回10.5円/第11回10.25円) 11円 12円 19円 2022年度 入札制度により決定
(第12回10円/第13回9.88円/
第14回9.75円/第15回9.63円) 10円 11円 17円 2023年度 入札制度により決定 9.5円 10円 16円 調達期間/
交付期間 20年間 10年間
経済産業省が2012年から開始したFIT制度(固定価格買取制度)によると、10kW以上の太陽光発電は20年間、10kW未満の太陽光発電は10年間、それぞれが発電した電気を規定通りの価格で電力会社に買い取ってもらえます。
土地を有効に活用できる
野立て太陽光発電は、日照時間の長い土地であれば、手入れされていない休眠状態の土地にも設置できることもメリットです。
使用していない土地を有効に活用できるのはもちろん、収入を得られることにより固定資産税の対策にもつながります。
空いた土地の活用方法として代表的なものは、アパートやマンションなどの集合住宅を建てたり、商業施設に土地を貸すなどの方法がありますが、いずれも安定した収益を得るためには欠かせない条件があります。
アパートやマンションなどの集合住宅であれば、居住者が通勤・通学しやすい立地であることが条件となりますし、商業施設を建てるのであれば集客が見込める立地でなければ借り手は付かないでしょう。
しかし野立て太陽光発電ならば、たとえ閑散とした地方や山間部でも、日照時間さえ確保できれば発電できるうえに、宣伝活動などの集客をする必要もありません。
さらに、災害時などの非常用発電設備としても利用できるなど、その活用範囲はとても広いのです。
出力の大きな発電設備を設置できる
太陽光発電を野立てで設置する場合、一般的に家庭の屋根などに設置されているような太陽光発電よりも大きな出力が得られます。
というのは、太陽光発電には家庭用と産業用があり、野立て太陽光発電では家庭用よりも出力の大きな産業用発電設備が設置できるからです。
産業用太陽光発電とは「10kw以上の発電容量を持つ設備」のことをいい、最低30坪以上(約100㎡)の土地があれば良く、正方形であれば縦横10mあれば設置可能です。
出力が大きいことは、売電するだけではなく自家消費する場合でもメリットがあり、将来自家消費に回すことがあれば、日常生活において消費電力の大きな節約につながるでしょう。
初心者の方が野立て太陽光発電に必要な準備
野立て太陽光発電を設置するためにはいくつかの準備が必要ですが、ここでは初心者の方向けに「最低限これだけは必要」という事項を紹介します。
土地の面積
野立て太陽光発電を設置するために必要な土地の面積は、産業用太陽光発電となる10kW以上の設備を設置できる広さが目安になります。
一般的に、太陽光発電1kWあたりに必要な土地は10~15㎡と言われていますので、最低でも100~150㎡必要です。
設置資金
野立て太陽光発電には高額な初期費用が必要です。
産業用太陽光発電はキットが販売されており、50kWの場合はソーラーパネルが200枚程度とパワーコンディショナーなどがセットで約1,000~1,300万円で販売されています。
土地から購入する場合は、総計1,500~2,000万円程度の資金が必要になるでしょう。
まとまった初期費用が用意できない場合は、ローンを利用し、太陽光発電の収入から返済していくという方法もあります。
最近では金融機関が太陽光発電をはじめとする新エネルギーに対応したローンを用意しているので、初期費用を抑えたい方は検討してみましょう。
個人で太陽光発電を運営する人向けの融資は地方銀行や信用金庫が積極的に行っており、産業用太陽光発電に対しては政府が運営する政策金融公庫からも融資を受けられます。
地目変更
土地には「地目」とよばれる分類があり、土地をどのような目的で使用するのかを登記簿に登記する必要があります。
太陽光発電を設置できるのは、「雑種地・原野・山林・宅地」のいずれかの地目に該当する土地と規定されているので、休耕地などに設置したい場合は地目を変更しなければなりません。
地目を「田」や「畑」から変更する場合は、居住地の農地は農業委員会に、居住地以外の農地は都道府県知事に農地転用の許可申請を行います。
許可を得たら、法務局で地目変更の手続きを行いますが、農地から地目変更すると固定資産税が高くなることに注意が必要です。
初心者が知っておきたい野立て太陽光発電の注意点
ここでは、初心者の方が野立て太陽光発電の運用においてあらかじめ想定しておくとよい注意点を紹介します。
近隣住民とのトラブル
野立て太陽光発電を設置したい場所の近くに住宅がある場合は、住民との間にトラブルを起こさないように注意しなければなりません。
特に多いトラブルとして、ソーラーパネルの反射による眩しさに対する苦情や、景観を損ねることに対する苦情が寄せられることがあります。
事前に近隣住民の方々に挨拶しておくなど、理解を求める努力を怠らないようにしましょう。
出力制限
太陽光発電を設置する地域によっては、電力の需要と供給のバランスを保つために出力制限がかかる場合があります。
不意に出力制限がかけられると、想定していた収入が得られなくなることもあるので注意が必要です。
その対策として、発電設備の出力抑制保険も用意されているので、安定した収入を確保したい場合は検討してみましょう。
雑草対策
野立て太陽光発電の運用で特に手間がかかるのが雑草対策です。
特に市街地から離れた郊外に設置されていると、雑草がすぐに成長してしまい、ソーラーパネルを覆い隠すほどになると発電効率にも影響します。
おもな対策としては、定期的に草刈り機や除草剤で処理する方法と、防草シートやコンクリートで覆ってしまう方法があります。
初心者でも野立て太陽光発電はできる!
野立て太陽光発電は、ポイントさえ押さえておけば初心者の方でも運用は難しくはなく、使用していない土地を有効活用できる方法としておすすめです。
日照時間さえ確保できるならば安定した収入が期待できるので、休耕地などをお持ちの方はぜひ導入を検討してみましょう。