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【どこよりも簡単】バイナリー発電の仕組みやメリットをやさしく解説

バイナリー発電って何?再生可能エネルギー
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近年、環境保護のためにさまざまな新エネルギーが導入されていますが、その一つに「バイナリー発電」というものがあります。

名称だけではどんな仕組みなのか見当もつかない方が多いでしょうが、近い将来に日本の電力供給の基幹となる可能性を秘めている発電方式です。

この記事では、バイナリー発電とは何かということから、仕組みやメリットなどを、初心者の方にも分かりやすく解説しています。

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バイナリー発電とは?

バイナリー発電は、おもに地熱発電で利用されている発電方式です。

従来の地熱発電では、地中から得られる熱水をエネルギー源として蒸気タービンを回転させて発電していました。

地熱発電については、こちらの記事で詳しく解説しています。

「バイナリー」とは「2つの」という意味ですが、バイナリー発電では2種類の蒸気を利用して発電します。

日本では今のところ、大分県九重町の「八丁原発電所」にあるバイナリー発電が、電力会社によって商用運転されている唯一の施設です。

その他、小規模のバイナリー発電もいくつか存在しています。

では、バイナリー発電の仕組みについて、事項で詳しく解説しましょう。

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初心者の方にも分かるバイナリー発電の仕組み

なぜ2種類の蒸気を利用するの?

バイナリー発電は2種類の蒸気を利用して発電しますが、なぜ2種類必要なのでしょうか。

それは、水よりも低い温度で蒸発する「2つ目の蒸気」を利用すれば、少ないエネルギーで発電できるからです。

ご存知のように日本には火山がたくさんあり、火山の持つ熱エネルギーによってもたらされている温泉が数えきれないほど存在しています。

しかし、地熱発電を水蒸気だけで稼働させるには150℃以上の熱水が必要で、火山大国の日本といえども厳しい条件なのです。

バイナリー発電には最低何℃の水が必要?

バイナリー発電に必要な水の最低温度は、わずか70℃程度です。

150℃以上の熱水を地中から得ることは相当に難しいのですが、70~120℃程度の温水・熱水ならば日本国内のあちこちで得られます。

このような多くの温水・熱水は、温泉として利用するには温度が高すぎるため、冷まして利用する必要があるなど、熱エネルギーが余っている状態でした。

この余分な熱エネルギーを発電に利用できないかということで開発されたものが、バイナリー発電なのです。

どんな物質の蒸気が利用されているの?

バイナリー発電の「2つ目の蒸気」には、アンモニア・ペンタン・フロンなどが利用されています。

例えば、八丁原発電所で発電媒体として利用されているペンタンの沸点は、わずか36℃です。

どうやって発電するの?

バイナリー発電は、温水の熱エネルギーによって「2つ目の蒸気」を作り出して発電する仕組みです。

単独で発電するには温度が足りない水蒸気が、アンモニア・ペンタン・フロンなどの他の物質を温めて蒸発させ、その「2つ目の蒸気」がタービンを回転させます。

バイナリー地熱発電で利用する水蒸気は、天然に存在する熱水・温水なので、エネルギー源は長い年数にわたって尽きることがありません。

こちらは、バイナリー発電の仕組みの一例と、従来の地熱発電との比較図です。

出典:九州電力「地熱バイナリー発電方式」の概要

バイナリー発電の将来性は?

資源エネルギー庁の2016年の資料によると、日本国内でバイナリー地熱発電を活用した場合の潜在的な発電容量は、2,347万kWです。

原発1基を100万kWとすると、原発23基分もの発電容量にあたるため、将来のベース電源として大きな期待を受けています。

出典:資源エネルギー庁

上記の表を見ても分かるように、上位3か国の地熱資源量は圧倒的で、日本の地熱資源量はあの広大な米国にも引けを取らないポテンシャルがあります。

にもかかわらず、そのポテンシャルをいまだ十分に活かせていない現状があるのです。

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バイナリー発電のメリット

バイナリー発電は地熱発電の将来性を非常に高めましたが、おもに次のようなメリットがあります。

  • 発電には不十分な温度の熱水・温水を利用できる
  • 温室効果ガスの排出が少ない
  • 安定して電力を供給できる
  • 比較的小規模な設備も運用できる

以下で、それぞれを順に解説します。

発電には不十分な温度の熱水・温水を利用できる

バイナリー発電では、水蒸気単独で発電するには不十分な温度の熱水・温水も発電に利用できることが最大のメリットです。

先述のように、日本には温泉に適した温水や、それよりもやや高温な熱水が全国各地に存在しています。

温泉として利用するには温度が高すぎることも多く、バイナリー発電ならば余った熱を発電に利用して温泉の適温まで下げるという活用も可能です。

温室効果ガスの排出が少ない

バイナリー発電を含む地熱発電は、自然界に存在している温水・熱水を利用して発電するため、CO2などの温室効果ガスの排出が非常に少ないこともメリットです。

火力発電のように、化石燃料を燃やして水蒸気を作り出す必要がありません。

安定して電力を供給できる

バイナリー発電を含む地熱発電は、新エネルギーの中でも発電の安定性に優れています。

例えば太陽光発電は、一定以上の日照時間が必要なため天候に左右されるほか、夜間には発電することができません。

また風力発電も、風が吹いていないときには発電できないため、安定した電力供給が難しいのです。

一方で地熱発電は、昼夜も天候も問わず安定して電力供給できるメリットがあるので、将来的には火力発電や原発に代わるベース電源としての期待を受けています。

比較的小規模な設備も運用できる

バイナリー発電は、小規模の設備でも能力を十分に発揮できるというメリットがあります。

従来の地熱発電は設備が大型で、かなりの開発費用がかかることが普及の妨げとなっていました。

設備が小型化されたことによって、地熱発電を導入する敷居が大きく下がり、すでに温泉施設などで活用されています。

また設備が小規模になると、設置できる場所の条件がゆるくなり、今まで設置できなかった場所にも適応できるようになりました。

地熱発電に適した場所は山間部が多いので、広い土地を必要としないバイナリー発電はうってつけです。

バイナリー方式の地熱発電は、険しい山地が多い日本の国土にとても合っていると言えるでしょう。

バイナリー発電のデメリット

バイナリー発電は、低温の熱源でも発電できるというメリットがありますが、一方でデメリットもあります。バイナリー発電のデメリットは、主に以下の3つです。

発電効率が低い

バイナリー発電は、低沸点の液体を気化させてタービンを回すという仕組みですが、この液体の気化には熱量が必要です。そのため、熱源から得られる熱の一部が液体の気化に使われてしまい、発電に使える熱量が減ってしまいます。また、タービンの回転速度も低くなります。これらのことから、バイナリー発電の発電効率は、一般的な地熱発電や火力発電などに比べて低いと言われています 。

発電量が変動する

バイナリー発電は、熱源の温度に依存して発電量が変わります。熱源の温度が高いと、液体の気化が促進されてタービンの回転速度が上がります。逆に、熱源の温度が低いと、液体の気化が遅くなってタービンの回転速度が下がります。熱源の温度は、気候や季節、時間帯などによって変動することがあります。そのため、バイナリー発電の発電量は、安定しないことがあります 。

安全対策が必要

バイナリー発電では、低沸点の液体として、オルガン系やアンモニアなどの化学物質を使うことがあります。これらの化学物質は、引火性や毒性があるため、取り扱いには注意が必要です。発電設備の漏洩や破損などの事故が起きた場合、周囲の環境や人々に被害を及ぼす可能性があります。そのため、バイナリー発電では、安全対策や管理体制をしっかりと整えることが必要です 。

日本で稼働中のおもなバイナリー発電所

現在、日本国内で稼働しているバイナリー発電所としては、以下のようなものがあります。

  • 滝上バイナリー発電所:大分県にある地熱発電所で、還元熱水を利用してバイナリー発電を行っています。最大出力は5,050キロワットです。
  • 土湯温泉バイナリー発電所:福島県にある温泉地で、温泉の蒸気と熱水を利用してバイナリー発電を行っています。最大出力は75キロワットです。発電後の温泉水は旅館に配給され、エビの養殖事業にも活用されています。
  • 小浜温泉バイナリー発電所:長崎県にある温泉地で、日本有数の熱量を持つ温泉を利用してバイナリー発電を行っています。最大出力は75キロワットです。発電後の温泉水は冷却されて温泉に利用されています。
  • 森バイナリー発電所:北海道にある地熱発電所で、還元熱水を利用して2023年11月からバイナリー発電を行っています。最大出力は2,750キロワットです。
  • JFEエンジニアリング千葉工場バイナリー発電所:千葉県にある製鉄所で、製鉄プロセスで発生する未利用熱を利用してバイナリー発電を行っています。最大出力は1,000キロワットです。

以上が、日本国内で稼働しているバイナリー発電所の一部です。バイナリー発電は、低温度の熱や温水を有効活用して再生可能エネルギーを生み出す技術です。

バイナリー発電の最新情報

近年、「業務スーパー」の創業者である沼田昭二氏が地熱発電に参入することを表明して話題になりました。

国内のバイナリー発電に関する最新の動きは、おもに以下のような情報があります。

先述のように、北海道の森バイナリー発電所が2023年11月から営業運転を開始しました。

また、岩手県雫石町では2019年から温泉施設に併設する形でバイナリー発電が稼働しています。

ちなみに、バイナリー発電ではありませんが、岩手県八幡平市では安比地熱発電所(出力14,900kW)が2024年3月1日から営業運転を開始しました。

岩手県で1万kWを超える大規模な地熱発電所の新稼働は28年ぶりということで、こちらも大きな注目を集めています。

【まとめ】バイナリー発電は新エネルギーの切り札

バイナリー発電を知らなかった初心者の方でも、これまでの地熱発電のデメリットの多くを克服しつつある画期的な発電方式であることがお分かりいただけたでしょう。

環境に優しいことに加えて、地域活性化にもつながる地熱発電が本格的に普及すれば、火力発電や原発に頼る必要がなくなるかもしれません。

近い将来、日本の電力インフラを大きく変える可能性を秘めているので、今後もバイナリー発電に注目していきましょう。

地熱発電については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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