原子力発電

日本の原発の現況は?将来はどうなる?簡単に分かりやすく解説

日本の原発の現状は?原子力発電
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日本の原子力発電(原発)がこの先どうなっていくのかは、エネルギー危機の状況にある現在、多くの方が気になるところでしょう。

この記事では日本の原発の現在の状況から、政府の方針に関する最新情報まで、できるだけ簡単な言葉で分かりやすく解説します。

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現在の日本で運転中の原発は?

まずは、現在の日本で運転されている原発がどのくらいあるのか見てみましょう。

2023年7月28日現在、運転中の原発は以下の11基です。

  • 美浜3号(関西電力・福井県)
  • 大飯3号(関西電力・福井県)
  • 大飯4号(関西電力・福井県)
  • 高浜1号(関西電力・福井県)※ 2023年7月28日に再稼働開始
  • 高浜3号(関西電力・福井県)
  • 高浜4号(関西電力・福井県)
  • 伊方3号(四国電力・愛媛県)
  • 玄海3号(九州電力・佐賀県)
  • 玄海4号(九州電力・佐賀県)
  • 川内1号(九州電力・鹿児島県)
  • 川内2号(九州電力・鹿児島県)

全て西日本に位置しており、炉型は全てPWR(加圧水型原子炉)です。

日本では西日本の原発の多くがこのPWRで、東日本ではBWR(沸騰水型原子炉)が主流です。

両者の違いを簡単に言うと、PWRの方が構造がやや複雑でコストがかかる分、深刻な事故が発生したときの安全性においては有利であるとの意見があります。

現在運転中の原発がPWRのみなのは、安全性を考慮してのことかもしれません。

また、九州電力の川内1号と四国電力の伊方3号は定期検査のため運転停止していましたが、川内1号は2023年5月から、伊方3号は6月から運転再開しています。

よって、検査中の設備も含めると、現在の日本では11基の原発が運転できる状態にあります。

さらに、再稼働を目指している原発もあり、新潟県・柏崎刈羽原発など以下の7基です。

(下図は2023年3月時点)

稼働中の原発

出典:NHK

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原発に対する政府の方針は?

現在の政府が将来的に原発をどのように活用していくのか、または削減していくのか、方針を確認してみましょう。

GXに関する基本方針

政府の原発に対する方針は、2022年12月に発表された「GX(グリーントランスフォーメーション)に関する基本方針」にまとめられています。

この内容によると、政府は原発の再稼働を進めていく方針です。

原発を、再生可能エネルギーを普及させるための重要なツールとしていることや、企業の脱炭素化の活動の一部と捉えていることを示す内容になっています。

方針の転換

政府は東日本大震災の発生後は、原発を新増設したり、建て替えたりすることを「想定しない」という方針でした。

しかし現政府は2022年12月22日のGX実行会議でこの方針を改め、原発を「将来にわたって持続的に活用する」と明記したのです。

この方針転換は大きな話題となりました。

運転期間の延長

政府は、再生可能エネルギーの拡大や企業の脱炭素化を進めるために、今後10年の間に官民合わせて150兆円以上を投じる方針です。

廃止が決定している原発を、建て替える方針に変更するとともに、原発の運転期間も現在の最長60年から実質延長される見通しとなりました。

最終的な目標

日本の最終的な目標は、脱炭素社会の実現です。

政府は、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標としています。

カーボンニュートラルについては、こちらの記事を参考にして下さい。

政府は原発を再稼働するにあたり、2030年度の電源構成の目標として、以下のように原発の割合が20~22%となるように調整する方針です。

電源構成目標

出典:NHK

ちなみに政府は、長期的な目標として2060年に原発を8基にまで減らすことを明言しています。

しかし今回の方針転換により、原発の運転期間が延長されると、下表のように現在から2060年に至るまでの原発の稼働数が大きく変わってくる可能性が出てきました。

2060年原発見込み

出典:一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)

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使用済み核燃料とMOX燃料

今後の日本の原発において一つの鍵を握っているのが、使用済み核燃料を活用できる原発と、その関連施設です。

使用済み核燃料を処理して、再び燃料として使用できるようにしたものを「MOX燃料」と呼びます。

青森県の大間原発はMOX燃料だけで発電する施設として建設されており、そのMOX燃料を作ることができるのが、同じく青森県の六ケ所村で建設中の施設です。

しかし、東日本大震災の影響で安全基準が厳しくなったことなどから、いずれの施設も長期間にわたって建設が停止されており、問題となっています。

六ケ所村の再処理施設

国内で唯一、MOX燃料を作ることができるということで注目されていた六ケ所村の再処理施設ですが、当初の完成予定だった1997年から26回も稼働が延期されています。

そんな状況でも全国の原発から使用済み核燃料が運び込まれており、すでに貯蔵プールは満杯となってしまいました。

今のところ、2024年の完成を目標としていますが、建設費が3兆円にも達すると言われているので、実現が疑問視されています。

大間原発

日本で初めて、MOX燃料のみを使用して発電することになっている大間原発ですが、こちらも完成予定だった2014年をとうに過ぎてしまっています。

改めて、大間原発の完成目標は2030年に設定し直されましたが、果たして無事に完成するのか、そしてリサイクル燃料の活用で日本のエネルギー効率化に貢献できるのか注目されています。

安全の確保も含めて、課題は山積みであると言えるでしょう。

次世代の原発「高速炉」

政府は、次世代の原発として「高速炉」というものを開発しようとしています。

高速炉は2040年代に運転開始を目指しており、2023年7月12日に高速炉実証炉の中核企業として三菱重工が選定されました。

実証炉の運用は2024年度から開始する予定です。

続報が入り次第、更新してお伝えします。

参考:三菱重工

ナトリウム冷却タンク型高速炉

ナトリウム冷却タンク型高速炉 引用:三菱重工

原発に関する海外の状況

世界的にエネルギーの脱炭素化に向かっている中、海外での原発に関する状況を簡単にまとめました。

各国の方針

各国の原発の利用状況と、将来的に使用を続けるのかどうかの目安は、下表の通りです。

世界の原発利用国の状況

出典:資源エネルギー庁

圧倒的多数の国が、将来的にも原発を使用し続ける方針であることが分かります。

特にフランスは、発電する電力の約7割を原発によって生み出している原発大国です。

一方で、ドイツ・イタリア・ベルギーといった国々が非利用の方針なため、再生可能エネルギーに関するEU内での意見対立が起きています。

EU内での意見対立

原発に絡むEU内での意見対立の要因の一つが、水素を巡る動きです。

将来性豊かな再生可能エネルギーとして注目されている水素ですが、現在EUで生産されている水素の多くが、石炭や天然ガスなどの化石燃料から作られています。

この現状を受け、原発推進派の国々が、原発によって作られた水素を「再生可能エネルギー」として認めるように主張しました。

しかし、原発反対派のドイツなど9か国が、この主張に反対しています。

また、2023年3月28日には、EUにおける再生可能エネルギー規制について協議されました。

ここでも原発推進派と反対派の意見が割れており、原発の位置付けについて合意が困難な状況です。

反対派からは、原発を再生可能エネルギーとして認めると、太陽光や風力などの発電の普及が遅れるとの意見が出ています。

再生可能エネルギーについては、こちらの記事も参考にして下さい。

日本の原発はどうなる?

日本政府は、現在のように電力供給が不安定な状況を解消するために、原発の再稼働を急ぐ方針に転換しました。

しかし、目標を達成するまでには課題が多く、政府の実行力が問われています。

国民の意見も賛否両論に分かれており、しばらくは不安定な状況が続きそうです。

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「らいと」の電力寺子屋
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