太陽光発電を休耕地などに設置したい場合には、農地転用という方法があります。
しかし、農地転用にはさまざまな条件や難しい手続きなどがあるので、初心者の方には理解しにくい部分も多いでしょう。
この記事では「農地転用して太陽光発電を設置したいけど、方法が難しい」とお悩みの方を対象に、できるだけ簡単に分かりやすく解説しています。
農地転用とは?
自分の土地に太陽光発電を設置したいだけなのに、なぜ農地転用する必要があるのでしょうか。
まずは農地転用とは何かということから、農地転用の必要性も併せて見てみましょう。
農地転用の概要
農地転用とは、農地を他の目的に使用する土地に変更することをいいます。
変更するのは、法務局の登記簿に記載されている「地目」というものです。
地目とは、それぞれの土地に設定されている分類のことで、土地の使われ方によって決まります。
地目には、宅地・学校用地・鉄道用地・雑用地などがあるほか、農地は田・畑・牧場などに分けられています。
つまり、田や畑などの農地として地目が設定されている土地を、宅地や雑種地などの他の地目に変更することが農地転用です。
農地転用の必要性
農地転用の手続きが必要な理由は、国内の食料自給率を維持することが挙げられます。
日本は食料自給率が低いため、農産物の生産量を一定以上に保っておかなければ、食料を輸入に大きく依存することになってしまいます。
また、農地を簡単に他の地目へ変更できてしまうと、農業の担い手がどんどん減っていく危険性も生じます。
農地転用は厳しい審査によって制限されており、簡単には他の地目に変更できないようになっているのです。
初心者が農地転用するための課題とは?
初心者でも農地転用はできますが、決して自由にできるわけではなく、克服しなければならない課題がいくつかあります。
では、実際に農地転用して太陽光発電を設置するためには、どのような課題を乗り越える必要があるのでしょうか。
課題となるのは、おもに次のようなことです。
- 手続きに手間と費用がかかる
- 農地の種類によっては厳しく制限される
- 太陽光発電の初期費用がかかる
以下で、それぞれを順に解説します。
手続きに手間と費用がかかる
農地転用の手続きには、普段は関わることのない難解な用語が多く登場し、多くの書類作成があります。
法律や不動産などの知識がない方にとっては、自分で手続きを行うことはかなり大変です。
農地転用にかかる費用は約1万円なので、手続きの費用自体は大きな負担とはならないでしょう。
しかし手続きの難しさを考えると、行政書士などの専門家に代理を依頼するほうが効率的です。
もし行政書士に農地転用の手続きを依頼した場合は、1件につき約15〜20万円の費用がかかります。
農地の種類によっては厳しく制限される
残念ながら、農地転用はどんな農地でも認められるわけではありません。
先述のように日本は食料自給率が低いので、農地転用は厳しく審査されます。
実は農地には種類があり、おもに第一種・第二種・第三種という分類が存在します。
簡単に言えば、第一種は農業専用とされる土地で、第二種・第三種はそれ以外の土地です。
第一種農地は農業専用の土地なため、基本的には農地転用が許可されません。
また、第一種農地と同様に、「甲種農地」と「農用地区域にある農地」も基本的には農地転用が許可されることが困難です。
では、これらの農地に太陽光発電を設置することはあきらめなければならないのでしょうか。
実は、一つの選択肢として、農地転用が難しい場合にも認められる可能性がある「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」があります。
営農型太陽光発電については改めて後述します。
太陽光発電の初期費用がかかる
太陽光発電を設置するための初期費用がかかることも、乗り越えるべき課題となるでしょう。
しかし太陽光発電の初期費用は年々下がっており、先述のソーラーシェアリングを政府も後押ししていることから、今後さらに初期費用が下がる可能性があります。
初心者が農地転用で太陽光発電を設置するメリット
初心者が農地転用して太陽光発電を設置することは、おもに次のようなメリットがあります。
- 休耕地や耕作放棄地を活用できる
- 日照時間が豊富で太陽光発電に向いている
- 農地と併用する方法もある
以下で、それぞれを順に解説します。
休耕地や耕作放棄地を活用できる
農業の後継者不足に悩まされている休耕地や耕作放棄地も、太陽光発電を設置することによって土地を有効に活用することができます。
過酷な農作業に従事する必要がなくなるので、管理もはるかに容易になるでしょう。
日照時間が豊富で太陽光発電に向いている
農地はもともと日照時間が豊富なので、太陽光発電を設置すれば豊かな発電量が見込めます。
土地も広いので、多くの太陽電池モジュールを設置でき、売電による利益も期待できるでしょう。
農地と併用する方法もある
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)という方法を利用すれば、太陽光発電を農地と併用することもできます。
ソーラーシェアリングとは、簡単に言えば、農地に支柱などを立てて上側の空間に太陽電池モジュールを設置する方法です。
ソーラーシェアリングによる太陽電池モジュールは、所々にすき間があるので、地面の農作物にも十分な太陽光が当たります。
ソーラーシェアリングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
初心者でも太陽光発電の農地転用はできる
初心者の方でもしっかり予備知識を身に付ければ、太陽光発電の農地転用をあきらめることはありません。
ただし無断で行うと罰則を受ける可能性があるので、必ず許可を受けましょう。
この機会にぜひ農地転用で太陽光発電を設置し、休耕地や耕作放棄地を有効に活用してみて下さい。